十分なたんぱく質を摂取するのに効果的な方法と、
じつは、たんぱく質が多く含まれる意外な食品を紹介する(写真:プラナ/PIXTA)
「人間は年をとるにつれて、だんだんと筋力が落ちていきます。
でも、同じ80歳でも、元気に生活できる80歳の方と、
足腰の筋力が弱ってしまいめったに外出できない80歳の方がいます。
この違いこそが、健康寿命の違いなのです」
健康寿命をのばす方法を探求し、
現在は筑波大学で「老年学」を教える山田実氏は、こう語る。
そんな山田氏が「健康寿命をのばして、良く老いる」ために
効果的な体操、食事、習慣を解説した書籍、『転ばない足腰』が出版された。
じつはたんぱく質が多く含まれているおやつのリスト
今回は「食事」に着目し、十分なたんぱく質を摂取するのに、効果的な方法と、
じつは、たんぱく質が多く含まれる意外な食品を紹介する。
■健康寿命をのばすにはとにかく「たんぱく質」
健康を維持するためには、「栄養」が欠かせません。
一言で栄養、といっても、健康を維持するうえで、必要な栄養素は
ビタミン、ミネラル、脂質、糖質、たんぱく質と複数あります。
その中で、「筋肉量を維持する」という観点で、今回は「たんぱく質」に注目します。
筋肉量を増やす(維持する)ためには、運動とたんぱく質の摂取が、必要になります。
言うまでもなく運動は大切ですが、たんぱく質をとることも、
同等もしくはそれ以上に重要になります。
じつは、若い人と高齢者では、同じ量のたんぱく質を摂取したとしても、
その効果が異なります。
若い人と高齢者が同じような運動をしていたとして、
若い人はたんぱく質を少しとれば、筋肉がつくられやすくなります。
対して高齢者のほうは、ある程度たんぱく質をとっても、
なかなか筋肉がつくられやすい状態になりません。
しっかりとたんぱく質をとることで、ようやく筋肉がつくられやすい状態になります。
ここから言えることは、高齢者のほうが若い人よりも、
しっかりとたんぱく質をとる必要性があるということです。
また、運動の効果も、たんぱく質をとることでより高まります。
「運動とたんぱく質の摂取を両方行った人」と「運動のみ行った人」とで、
筋力の改善率を比べてみると、運動とたんぱく質摂取の両方を行った人のほうが、
筋力の改善率が高まることがわかっています。
■「食材数」を意識する
1日にとるべきたんぱく質の量は、一般的には体重1キロあたり1グラムがひとつの目安です。
ただし、筋肉を増やす必要がある場合は、体重1キロあたり1.2~1.5グラムと、
少し多めにとる必要があります。
体重60キロの人だったら1日に最低72グラム、できれば90グラムのイメージです。
でも、体重1キロあたり1.2~1.5グラムも、たんぱく質を摂取するのは結構大変です。
白米1杯、さけの塩焼き1切れ、牛乳1杯で摂取できるたんぱく質は、合計で36グラム程度。
1日に90グラムものたんぱく質を摂取することの大変さが、イメージできたでしょうか。
なので、「たんぱく質をたくさんとるぞ」と意気込んでも、挫折してしまうことがあります。
そこで、無理せず十分な、たんぱく質をとる方法を2つ紹介します。
まずみなさんに意識していただきたいのは、「使われている食材の数」です。
じつは食材数が多いほど、たんぱく質の摂取量も増えることがわかっているのです。
食材数が多いからといって、たんぱく質が少ない食材に、食事がかたよることはまれで、
食材数が増えるほど、たんぱく質を含む食材も増えることが普通です。
その意味で食材数というのは、1日に必要なたんぱく質の量を知るうえで、わかりやすい目安になります。
私は、講演などでお話しする際、
「1日に食べる食材数は、理想は30、最低でも20はクリアしましょう」と言っています。
この「食材数」の目安がすぐれているのは、
「目に見えて、数えられる」という点にあります。
「たんぱく質を90グラムとりましょう」と言われても、
運動のように「1時間歩いた」、「スクワットを10回やった」などと数えることが難しいです。
また、筋力や体力の衰えは、階段の上り下りや歩くスピードなどで、体感的にわかりますが、
たんぱく質の不足というのは、日常生活の中では、把握しにくいものです。
そこで、食材数をおおまかな目安とすることで、
「今日は10種類しか食べていなかった。明日はもっと種類を増やそう」と、
日ごろの食事において、たんぱく質がたりているかどうかを、意識づけすることができるのです。
■「おやつ」でおいしくたんぱく質補充
2つ目は、「おやつ」を上手に利用する、です。
「たんぱく質をたくさんとる」という観点から見ると、
おやつも心がけ次第で、たんぱく質を補ういい機会になります。
卵、乳製品、大豆など、たんぱく質が豊富に含まれる食材を使っているおやつは、
プリン、ソフトクリーム、どら焼きなど、世の中にけっこうあるのです。
私がよく高齢者の皆さんにお伝えしているのは、
「買い物に行くときに、スーパーで栄養成分表示をよく見るようにしてください」 ということです。
自分の目で確認して買うようにしましょう、と呼びかけています。
もちろん、食べすぎは禁物ですが、
「同じ甘い物でも、どうせ食べるなら、たんぱく質の多いもの」を選んでみてはいかがでしょうか。
山田 実 :筑波大学人間系教授 ・・ 》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。