ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

インドと中近東の歴史

2015-03-01 14:18:32 | 生活

先日書いた世界の歴史19「インドと中近東」を読み終えた。後書きによると初版の全集本は1969年発行で、1990年に文庫本にする際に見直しをしたが、歴史書なので見直しの必要はなく、細かい修正を除いてほぼそのまま文庫本にしたとのことである。

読み終えた感想は「この10倍くらいの詳しさが必要」という感じである。トルコ、黒海沿岸、カスピ海沿岸、イラク、イラン、アフガニスタン、インド、パキスタン地域の歴史を書いているのだが、すごく飛ばして書いてある感じで、日本史で言えば、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の政権交代を1ページで書いているような感じである。全体で400ページ弱の本だが、それだけあらゆる地域で政変や滅ぼしたり滅ぼされたりが、頻発しているということである。戦いの原因は宗教戦争の側面が非常に多い。きちんと理解したとはとても言えないが、それでもイスラム教についてある程度のイメージはつかめたと思う。

私が理解したイスラム教は

・神の前に皆平等(女と奴隷を除く)

・正しく働いて対価を得るべき(金利の禁止)

・日常活動に様々な宗教活動が入るべき

という考えで、後から出てきただけに先進的な面がある。その一方

・暴力を否定していない

・統治の仕組みがない

という問題点がある。これらの理由により、イスラム教は兵士の戦いにとってのエネルギー源になるのだが、戦いが終わってしまうと体制を維持するイデオロギーが存在せず、権力を握ったものが勝手にルールを決めて対抗馬を弾圧し、周辺に不満が蓄積されてクーデターのようなことが起こる、ということを現在に至るまで繰り返している感じである。世襲も認められていないのだが民主主義による選挙という制度も定着していない。

一般的に宗教は個人の心の規律を規定するもので、統治の仕組みは宗教には含まれておらず別に育てていかなくてはいけない。統治のためにはある程度の身分制や役割分担が不可欠で、他の地域では封建制や議会制民主主義などを広めてきたのだが、イスラム地域ではイスラム教のみで統治しようという方向に戻ることが多く、うまくいかないのだと私は思っている。現在、イスラム圏ではトルコが議会制民主主義を取っているが最近はイスラム回帰が起こって雲行きが怪しくなってきた。宗教で国を統治しようという勢力が強いうちは、イスラム圏の諸国は安定しないだろうと思う。今サウジアラビアが王政で安定しているように見えるか、王政はイスラム教の教えではなく、石油が取れて豊かなので安定しているだけで、いずれサウジも不安定になると思われる。

この本の取りまとめは岩村忍という人で、この人の見識はたいしたものだと思う。既に故人となっているが、この人の書いた本をもう少し読んでみようかという気になってきた。