YouTubeで出色のCMを発見した。登場するのは千鳥の大悟。
(スマホで)
「ああ、親父。元気、元気!
突然あれなんやけどやー、中国電力のグッドずっとクラブって知っとる?
知っとる!
ホンマに親父かー?」
わずか16秒の遣り取りである。通常のといっては変だが、「通常のオレオレ詐欺」の逆パターンである。それは解るが、なにやらヒネリがありそうだ。そこで、愚慮してみた。
1. 普通のオレオレ詐欺は子が親に窮状を訴え金を要求するのに、これは子が親に優良な情報を提供しベネフィットを供しようとしているいる。親に嫌なことをせがむのではなく、親に楽をさせようとしている。
2. 普通のオレオレ詐欺は親が同情するのに、「知っている」からと同調も同情もしない。これでは親心を擽(クスグ)るどころか、完璧にスルーされたことになる。
3. 田舎暮らしの頭の固い親父がこんな最新お得情報を知っているはずがない。なのに知ってるという。
4. だから普通のオレオレ詐欺は電話の相手が本物の子かどうか疑うべきなのに、子が相手が本物の親かどうか疑っている。
と、以上4点を捻(ヒネ)り出した。それがどうしたと言われても困るのだが、この盆暗には頭の体操にはなった。加齢とともに身体は老醜を極めるものの、知は華麗の度を増す。そう心得でもしないと、やっていられない。
「オートファジー(細胞の自食作用)」の解明で2016年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典先生はこう語る。
〈大きな問題として、「科学(サイエンス)」と「技術(テクノロジー)」が区別されず、「科学技術」という言葉で括られてしまっていることがあります。多くの人は、「科学」は「技術」の基礎なんだ、という理解をしてしまっています。これは非常に大きな問題だと思います。「科学」というものは、原理や普遍性や法則性を「発見」する過程です。一方の「技術」とは「発見」という言葉に代表されるものです。実はこの二つには大きな違いがあるんだと言うことを、もう少しわかっていただく必要があります。〉(柏書店「『役に立たない』研究の未来」から抄録)
これを当てはめると、≪アインシュタインは発見者で科学者、エジソンは発明者で技術者≫となろうか。位階の上下ではなく、なにかエラく腑に落ちた。
続けて先生は、
〈科学、つまり人間の知を拡げる活動というのは、「文化」として捉えたほうがいいんです。芸術とかスポーツですばらしいパフォーマンスを目にしたとき、われわれは感動しますよね。その感動というのは、決して「役に立った」という言葉で測られるものではないはずです。〉(同上)
と述べる。中野信子先生によると、脳内ホルモン・ドーパミンは新しいものごとや未知の世界に触れたいという「新奇探索性」の源泉であるそうだ。大隅先生が言う「感動」の正体はこれにちがいない。面白いことに南米や南ヨーロッパの人びとにはこれがとりわけ多い。南米は地理的、南欧は種の煩雑さをディスタンスと捉えれば、出生地東アフリカから遠ざかるほどドーパミンを要したといえなくもない。日本人はというと、際立って少ないそうだ。
併せて、ドーパミンはギャンブルという「新奇探索性」をも刺激する。してみると、万が一の成功に賭けて五輪に猪突するどこかの政権要路は日本人には珍しいサピエンスである──ということを
「突然あれなんやけどやー、親父、知っとる?」 □