「二元論」
(14)のつづき
ハイデガーが思想転回(ケ―レ)する前にも、また後にも、ブレず
に一貫して追い求めた世界とは、〈存在〉を「本質存在」と「事実
存在」に二分して思惟する〈形而上学〉以前の世界で、それはプラ
トン・アリストテレスの先人である「ソクラテスよりも前の時代の
思想家たち」という意味で「フォアゾクラティカー (Vorsokratiker)」
と総称される。名前が伝わっている思想家はアナクシマンドロス、
ヘラクレイトス、パルメニデスなどで、彼らは〈存在〉を〈形而上
学〉的には思索したりしなかった。もちろん、この〈形而上学〉的
二元論の末に、紆余曲折を経て、たとえばプラトンのイデア論やキ
リスト教世界観を経て、近代科学文明社会が隆盛したことは言うま
でもない。ハイデガーが形而上学的二元論的世界の〈限界〉を見破
って、何故なら〈存在=生成〉が抜け落ちた存在概念によって固定
化されているからだが、つまり人間中心主義(ヒューマニズム)的な存
在概念によって生成変化する世界を科学技術(固定化)によって作り変
えることはやがて行き詰まること明白で、唯一われわれの科学主義が
成果を生む世界はきっと地球外にしか残されていない。つまり、われ
われが科学技術によって地球を汚染し生命が絶えた時に、その科学技
術によって新たな惑星を地球化して、地球を脱出するための手段とし
て役立つかもしれない。
(つづく)