「同じものの永遠なる回帰の思想」⑥-5のつづき

2018-09-30 22:30:57 | 従って、本来の「ブログ」


       「同じものの永遠なる回帰の思想」⑥-5のつづき


       ハイデッガー著「ニーチェ」ⅠⅡを読んで-5のつづき


 晩年のニーチェは、「新たな価値定立の原理」という表題の下に自らの

主著の執筆に取り掛かろうとしていたが、已んぬるかな、精神を病んでし

まって著わすまでには至らなかった。そこでハイデガーは、ニーチェが書

き残した断片やメモを基に彼の思想を読み解こうとする。その根本思想は

「力への意志」にほかならない。ただニーチェの死後に妹エリーザベトが

彼の遺稿を編纂して『力への意志』という書物を刊行したが、それはニー

チェの意図とはかけ離れた彼女の恣意的な編集によるものだった。

 さて、「新たな価値定立」とは「古い価値」の放棄であり、古い価値と

はプラトンに始まりキリスト教世界観へと続く西欧形而上学の否定にほか

ならない。前にも記しましたが、形而上学(Meta-physic)とはものごとの

本質を問う学問である。例えば、命あるものは命が終わると死ぬ。すべて

の生命体は何れ消え去る存在でしかないのであれば、それらは本質的な存

在ではなく仮象の存在でしかない。この世界が仮象の世界であるなら本当

の世界は何処にあるのか?プラトン(プラト二ズム)は本質的な世界を「イ

デア」(超感性)に求め、仮象世界と分け隔てて(二世界論)、それはキリス

ト教世界観へと受け継がれていく。古典文献学の教授としてプラトン以前

のギリシャ哲学に精通していたニーチェは、理念化された「イデア」論を

逆転させ、世界とは「力への意志」であると生成(カオス)の哲学を主張す

る。世界が生成(カオス)であり生の本質とは「力への意志」であるとすれ

ば、生成変化を繰り返す世界から見れば、永遠不変の「真理」でさえもそ

の絶対性は揺るぎ、「真らしきもの」を求めることは必然であったとして

も、しかし「真理とは《幻想》なり」と説く。そしてハイデッガーはニー

チェの思惟を次のように解説します。

「或るものを持続的に存立する堅固なものという意味において存在的なり

と表象することは、一種の価値定立である。《世界》の真なるものを、そ

れ自体で持続的に存立している永遠不変なるものへ持ち上げるということ

は、とりもなおさず、真理を必然的な生活条件として生そのもののうちに

移すということなのである。しかしながら、もしも世界が不断に変遷する

無常なものであるとすれば、もしも世界が過ぎ去りゆく不定なもののもっ

とも無常なものにこそその本質をもっているのだとすれば、そのときには

、持続的に存立する堅固なものという意味での真理は、それ自体としては

生成しつつあるものをたんに固定化して打ち固めたものにすぎず、この固

定化は生成するものに照らしてみると、これにそぐわないもの、これを歪

曲するものでしかないだろう。正当なものとしての真なるものは、かえっ

て生成に即応しないことになるであろう。そうなると、真理は、不=正当

性であり、誤謬であり――たとえ必然的なのかも知れないが、やはり一種

の幻想となるであろう。」

つまり、「世界とは生成なり」であるなら、真理とは《幻想》であり、ま

た、真理とは《一種の誤謬》であるのだ。

 ニーチェは、古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスの思想である「万

物流転」に共感し、それは鴨長明の「方丈記」にも通じる世界観である

が、世界とは永遠に生成変化を繰り返す力への意志であり生成であると

すれば、絶対的真理という理念は「幻想であり、一種の誤謬でしかない」

と説く。我々が手にする真理とは限定的なもので、しかも「幻想であり

一種の誤謬でしかない」とすれば、我々は世界全体を言葉(理性)によっ

て固定化して捉えることは出来ないことになる。理性による認識が真理

に的中しなかった世界はニヒリズム(虚無主義)に陥らざるを得ず、理性

はニヒリズムこそが我々の置かれた境涯だと説くことしかできない。つ

まり、理性《固定化》は生成《変化》を掌握することはできない。

                          (つづく)


「もしかして、また?」

2018-09-06 08:01:37 | アフォリズム(箴言)ではありません

         「もしかして、また?」  

「泊原発、非常用電源で対応 異常確認されず 北海道電力」
2018年9月6日04時26分
https://www.asahi.com/articles/ASL961D3TL95ULBJ016.html?iref=comtop_8_06

原子力規制委員会や北海道電力によると、6日未明に北海道で発生
した地震により、北海道電力泊原発(北海道泊村)の外部電源が喪失
した。ただ、1~3号機は再稼働に向けた規制委の審査中で運転を
停止しており、原子炉内に核燃料はない。非常用ディーゼル発電機
により、燃料プールにある使用済み核燃料の冷却は継続している。
6日午前4時現在、異常は確認されていないという。ディーゼル発
電機の燃料は、少なくとも7日分は確保されているという。

        *       *        *

福島原発事故の時も外部電源が喪失後、津波の被害によって全電
源喪失、所謂ステーション・ブラック・アウト(SBO)に陥り、
炉心溶融(メルトダウン)、そしてその後に水素爆発が起こった。
もしも、津波が発生するほどの地震が再び起こったら・・・、

「ほんまに大丈夫なんかいな?」