「ハードランディング」

2012-02-22 23:09:52 | 「パラダイムシフト」



          「ハードランディング」


 中国経済を注視しなければなりません。過熱したバブル景気はブ

レーキが効きません。中国国内から、それも政府系のシンクタンク

が以下の様に警鐘を鳴らすということに、その深刻さが窺えます。



Reuters JP

   「中国経済、今年ハードランディングの可能性

                 =政府系シンクタンク」


[北京 22日 ロイター] 中国の政府系シンクタンク、経済体

制改革研究会(CSER)のシニアエコノミストは、不動産セクタ

ーの不振や世界的な需要鈍化により、国内経済は今年ハードランデ

ィングに陥るとの見通しを示した。

CSERのShi Xiaomin副代表は、景気は鈍化しているだけでなく、

過剰投資に悩まされており、政府の選択肢を制約していると指摘。

「内外需の緩みにより(年間の)国内総生産(GDP)伸び率は8

%を下回って、おそらく6―7%となり、ハードランディングの可

能性もある」と述べた。

「より懸念されるのは、景気鈍化が経済の総合的な効率性の急低下

とあいまって起こることだ」とし、今年後半か来年にデフレに陥る

可能性もあると指摘した。

CSERは国家発展改革委員会(NDRC)傘下にある。




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「あほリズム」(185)

2012-02-22 03:56:43 | アフォリズム(箴言)ではありません



            「あほリズム」


              (185)


 これまでの時代を一言で言うと、

 「金さえあればどうにでもなる」時代だった。

 これからの時代は、

 「金があってもどうにもならない」時代である。





             (186)


 かつて、神への依存を絶ち 精神の自立を求めたように、

 今、我々は物質への依存から 身体の自立を求めなくてはならない。






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「雪辱」

2012-02-20 13:21:24 | 短編



                 「雪辱」  



 変な時間に目が覚めて、飲まずに寝れなくてコンビニへビールを

買いに行こうと家を出ると、外は雪だった。寝る前には降ってもい

なかったが、寝てる間に足首が埋まるほど積もっていた。部屋に戻

ってコートと毛糸の帽子を身に着け足してブーツを履いて雪が降り

頻る中を出掛けた。足下の新雪が踏み締める度にギュッギュッと鳴

った。街灯が所々を照らす狭い裏道には俺の足跡だけが残された。

足元を気にしながら歩いていると、独りの男がこっちへ向かって歩

いて来た。まだ眠気が残っていて、雪には堪えることができても、

他人と出会うのは偶然であるが故に気が滅入った。

 動物の本能というものは知らないものと出会った時に好奇心より

もまず恐怖心が先行する。怪しいものではないかと疑いながら相手

を探る。動物にとって生きるとは不安の中を生きることである。動

くことのできない植物などは不安を感じても逃げることが出来ない

ので恐怖心は無用である。無用な感情は淘汰され、植物は不安を

知らないから憂いのない美しい花を咲かすことができるのではない

だろうか。彼女らは折られようが切り倒されようが恨まない、無いの

だから。それはひとつの諦観である。なまじっか動ける動物はすべ

てが自己責任である。警戒心を解いて襲われた後には逃げなかっ

た悔恨が残る。だから、動くものは常に後悔と共に生きている。か

と言って、四六時中不安の中で生きるには身が持たない。そこで

共同体が生まれ、それぞれが互を認知し合って不安を少なくしよう

とする。他者を知ろうとするのは自分の不安をなくすためなのだ。

猫は猫の本能に従って、犬は犬の本能に従って、不安を減らすた

めに他者を知ろうとする。賢しい知性とは好奇心からではなく恐怖

心から生まれるのだ。

 俺は、向こうから来る男がどんな奴なのか見た。この裏道で二人

の大人がすれ違うには狭かったし、積もった雪がさらに狭くした。

奴は別に変な恰好をしているわけではなかったが、頭と肩には雪

が積もっていたが気に掛ける様子もなかった。すると、奴も俺の方

を見たので目が合った。俺はすぐに目線を逸らした。まったく出会

ったことのない男だった。

 人は不安から逃れるために共同体を作ると言っても、都会の生活

は度を越えている。かつては、向こう三軒両隣の晩御飯の献立さえ

も知るほどの付き合いだったが、ま、それはそれで鬱陶しいことだ

ったが、人々が密集して然も多様化して無関心にならざるを得なく

なると、突如としてその無関心が不安を呼び覚ます。すると、急に

街までがよそよそしく感じられて不安の妄想が止まらない。もはや

都会は不安から逃れるために相応しい共同体ではなくなった。それ

どころか反対に、「大都会の中の孤独」に苛まれ無縁社会の無関

心こそが人々を不安に陥れる。我々は遠い社会にばかり関心がい

って、身近な生活への関心が薄れてしまった。

 二人はあと十歩も歩けばどちらかが道を譲らなければならなくな

るだろう。別に俺は道を譲ることにこだわりはなかったが、それで

も奴とすれ違うほどに身体が近付くことが鬱陶しかった。そして、

奴はいったい何者かと思った。

 たまたま道ですれ違う者が何者であろうと、たとえば大通りで行

き交うだけならば気にも掛けないことが、袖擦り合うほどの狭い道

で出くわしたことが煩わしい因縁を生む。つまり、俺が奴を不安に

感じるのはこの状況こそが原因ではないのか。見知らぬ者とのこの

距離感こそが不安をもたらすのだ。他者のことは知れば知るほど不

安は減り、従って、不安は情報に反比例し、そして、近付けば近付

くほど不安は大きくなるので、距離にも反比例する。つまり、他者へ

の不安が増大する状況とは、知らない者が近寄ってくる時、つまり、

「未知との遭遇」の瞬間である。

 そんなことを思いながら歩いていると、いよいよどちらかが道を

開けなければならなくなった。俺は道を譲ろうと身を除けると、奴

も同じ側らへ身を交わした。それでは行き交えないので再び俺が反

対側へ移って道を開けようとすると、奴も同じようにそうするでは

ないか。「馬鹿かっ」と思いながら、互いにそんなことを繰り返して

いては埒が明かないので譲らずに前に進もうとすると、あろうことか、

奴と正面同士でぶつかってしまった。

「痛ってえ!」

一気に怒りが込み上げてきて、奴の顔を睨み付けると、何と!奴と

は花屋のショーウインドウに映った自分の姿だった。俺は積雪に惑

わされて道を誤っていたのだ。

 奴がガラスに映った自分自身だと知って、俺はぶつけた鼻に手を

当てながら、情報量は距離に反比例するのだと付け加えた。相手を

知るには近寄らなければならないのだ。しかし、それでは不安が増

大する。何とか近寄らずに知る方法はないものか・・・。

「あっ、それでインターネットが生まれたんか」

俺は思わぬ発見に気を良くした。ただ、そこからコンビニまでの雪

道には鼻面をショーウインドウに思いっ切りぶつけて流れ出した鼻

血が点々と続いたが、この恥ずべき出来事は降り積もる雪が雪(そ

そ)いでくれることだろう。                                                                             
                                  (おわり)


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「アブラの冬」③

2012-02-19 04:56:57 | 「パラダイムシフト」



             「アブラの冬」③


 日本を含む西側先進諸国は、国際社会の警告を無視して核開発す

るイランに対して石油の輸入を止める経済制裁を科そうとしている

が、それに対抗してイランはホルムズ海峡の封鎖を言って脅したり

と、一触即発の危機にあることは間違いない。私は本来、これから

の日本経済を危惧して以下の本題を記すつもりでいたのだが、これ

までの前説が長くなってしまった。

「アラブの冬」①で言ったように、イスラエルによるイラン国内に

ある核施設への攻撃は高い確率で行われ、イスラム諸国を巻き込ん

だ第何次か知らないが中東戦争が起こる可能性だって否定できない。

ただ、産油国の多くは国内に民主化運動という内憂を抱えているの

でそれに係わってばかりはいられない。ところが、イスラエルでは民主

化が進み国家の代表は投票によって選ばれ、それらの国より憂いが

なく、ただ、外患のみに煩わされてきた。選択肢は遥かにイスラエルの

方が多い。しかし、選択肢が多いことが優位であると断定できないこと

は、以前に高坂正尭氏が「日本存亡の時」の中で述べていたように「迷

いを生み」結果的に間違った選択をすることだってある。言えることは、

中東の混迷は間違いなく原油価格を高騰させ、エネルギーをそれらの

国々に頼っている日本の経済を直撃することは避けられない。さらに、

先頃はインドネシアも自国の経済成長をまかなう供給を優先するために

石油の輸出を禁止しようとしている。

 ところで、我が国は東日本大震災による福島原発の事故から、原

発の再稼働が国民の反対から困難になっている。すると当然、今の

ところ石油による火力発電に頼るしかないのだが、その想定も原油

不足と高騰から思惑通りいかないかもしれない。もし、中東の混迷

が長引くようなことになれば石油の備蓄が底を突き、かつてのよう

に石油ショックに見舞われて去年の夏以上に電力不足から日本経済

を担う製造業が生産できなくなって失速するかもしれない。そして、

一年も経てばフクシマのことなど忘れてしまい、冷めやすい世論は

背に腹は替えられんと原発の再稼働もやむなしと逆振れするかもし

れない。

 もちろん、それは日本経済だけが被る危機ではなく、中国を始め

新興国でも深刻なエネルギー不足に悩まされることだろう。恐らく、

それらはロンドンオリンピックが閉幕した辺りに現れて、おっと忘

れてた、EUの経済危機もギリシャ一国さえも未だ片をつけられず

に果たしてそれ以外の国々をどうして救済できるだろうか。そう言

えば、四年前に北京オリンピックが閉幕すれば中国経済が崩壊

すると散々言われたが、豈図らんや、アメリカで格付け会社からト

リプルA の評価を受けていたサブプライムローンが破綻してリーマ

ンショックが起こったように、思いがけない国が経済危機に陥るの

ではないだろうか。それは世界経済の危機をもたらすに違いないが、

日本から起こらないことを祈るばかりだ。ただ、我々には更なる「冬

の時代」待っているかもしれないことを忘れてはならない。「アラブ

の冬」は、資源を持たない我々にとっては「アブラの冬」の時代なのだ。


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「アラブの冬」②

2012-02-19 02:52:07 | 「パラダイムシフト」




               「アラブの冬」②


 先の「アラブの冬」の記事をブログに掲載して(2月18日21:

06:39)すぐに、以下のニュースが「 asahi.com 」に載った。



「待ち望んだ反応」米国務長官、イランの対話姿勢を評価
               
                   2012年2月18日21時10分

 クリントン米国務長官は17日、イランが国連安全保障理事会の

常任理事国にドイツを加えた6カ国との協議に応じる意向を示した

ことについて「我々が待ち望んでいた反応だ」と歓迎した。イラン

の意向をさらに分析したうえで、協議再開を決断する考えも示した。

 イランから書簡を受け取った欧州連合(EU)のアシュトン外交

安全保障上級代表と国務省で会談し、共同記者会見で述べた。クリ

ントン氏は、協議で核開発問題を最初の議題とするという6カ国側

の要求を「イランが受け入れているようだ」と評価した。イランは

協議再開に向けた前提条件も示していないという。

 協議再開の時期については、6カ国が書簡の分析を終える必要が

あると述べるにとどめた。また、原子力利用の国際的義務を守ると

いった具体的成果を出すところまで協議を続ける意向がイランにあ

るかどうかも見極めたい考えも示した。

 
 僅か4分足らずで私の予想は外れたことになる。記事そのものよ

りもそのタイミングに驚かされた。ただ、イランは「協議に応じる

意向を示した」もののまだ応じてはいないし、それに「6カ国協議」

と聞いて何だか良からぬ記憶が甦ってくる。それどころか「毎日新

聞 2012年2月11日 東京朝刊」では、

 アフマディネジャド大統領に対し、イスラム体制の最高指導者ハ

メネイ師やラリジャニ国会議長を中心とする反大統領派は「大統領

が将来的に体制変革をもくろんでいるのでは」と勢力伸長を警戒し

ており、利権争いも絡み、生き残りをかけた政争の様相を示してい

る。(一部抜粋)

 とある様に政権内部も一枚岩ではなく、様々な駆け引きが行われ

ているようだ。それにしても現大統領は「体制変革」ってどう変革

しようとしているのだろうか?政権から聖職者を排除しようと考え

ているのだろうか。まさか民主化運動の先頭に立とうとでも言うの

だろうか?何れにせよ「協議に応じる」からといって、クリントン国

務長官が「待ち望んだ結果」になるとは到底思えない、のだが。

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