「間違って生まれてきた僕」―⑤

2015-01-02 05:41:21 | 間違って生れてきた僕

 


        「間違って生まれてきた僕」―⑤


 先生、まず、

「あけましておめでとうございます」

 ついでと言っちゃ失礼ですが、作者がどうしてもそう言わせたい

ようですので、

「読者のみなさん、あけましておめでとうございます。今年もよろし

くお願いいたします」

 さて、先生、何度も言いましたように僕はわざわざ学校に行って「

勉強」させられたくありません。そもそも学びたいという欲求はそれ

ぞれの知的好奇心から生まれるのですから、少なくとも知的関心のな

い体育や道徳の授業は受けたくありませんし、その他の授業も様々な

活動も退屈でしかたありません。ただ、もしも間違って生き延びるよ

うなことにでもなれば、修業資格は資格試験を受けるつもりでいます

。先生はえらく学校のことで悩まれておられるようですが、前にも言

いましたがIT化が進めばやがて学校なんて「オワコン」になってし

まうので、まあ、能力のない者は卒業証書をもらうために登校するし

かないかもしれませんが、詰らないことであまり悩まない方がいいと

思います。そして先生がメールで述べられたこと、三島イズムも天皇

も民主主義さえも「間違って生まれてきた僕」にとってはどうだって

いいことです。まったく関心がありません。もしも憲法改正されて国

軍が創設されれば志願すれば武器が手に入って苦しまずに死ねる方法

が一つ増えるくらいにしか考えていません。ところで、僕はまたして

も詰らない水を向けたせいで先生は三島由紀夫について述べられまし

たが、先生が言うように三島由紀夫は戦時下の異常な社会環境と特殊

な家庭環境から受けた幼少期の洗礼から終生逃れることができなかっ

たのかもしれません。彼の処女作なのかどうかしりませんが初期の「

花ざかりの森」という小説を読むと、重厚な文章でとても十代の若い

青年が書いたものとは思えません。僕が言うのも変ですが、時代の影

響なのか死に遮られたようにまったく未来というものが描かれていな

くてその暗さはまさに太宰治とよく似ています。多くの者が死んでい

く中で死を覚悟した者が、戦うことなく生き延びた無念を忘れて戦後

の繁栄に浮かれることができなかった。つまり、三島由紀夫は遂に歴

史と伝統が咲き乱れた「花ざかりの森」から抜け出すことができなか

ったのだと思います。

                          (つづく)