「自然に回帰しよう!」
(4)
科学物質過敏症という聴き慣れない病気に罹った娘を連れて自然が残る実
家に帰った妻は、近くで無農薬で米を栽培している生産者を見つけてさっそ
く取り寄せた。そして自らも無農薬で野菜を作り始めた。彼女は、
「だって毎日口に入れるものが農薬に汚染されていたら何をしたって意味が
ないでしょ」
確かに、農薬の散布によって科学物質に暴露されて発症するとすれば、当た
り前のことだがその農薬、つまり科学物質に汚染された食材を直接体内に取
り入れることの方がはるかに影響が大きいことは明らかだった。科学物質を
避けようと自然豊かな農村に引越しても、近くの農村ではしきりに農薬散布
がおこなわれて、そのたびに娘は頭痛を訴えた。そうして作られた食べ物を
気にしないで口にするにはどうしても躊躇いがある、と妻は言った。
(つづく)
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