退職後はラジオを聴くのが癖になっている。大分以前から気が付いていたが最近になってはっきりと思うようになったこと。ラジオの女性アナの声を聞くにつけて、好い声だなあと、ほれぼれするアナが何人かいる。気象予報士、道路交通情報のアナ、ニュースを伝えるアナ。どうも自分にはあるタイプの声の質が心地よく聞こえる。ラジオならではのことで、テレビでは外観や容貌が印象に残る。チャップリンの「街の灯」では目が悪い花売り少女にチャップリン扮する中年男が恋をする。いつも少女に会うと花を買い、顔を見てそれが嬉しい。少女は男を好いている。少女は目の手術をすることになった。少女は目が見えるようになった。そして男は見えるようになった少女と会う。男は何となくおずおずと恥ずかし気に、会うことを躊躇したように。だが、少女に見つかり会う。初めは少女はこの男が誰だか分からない。だが話をしだして、その声で彼女はそれがあの優しかった親切な男だと分かる。見かけはしょぼい中年男、だがその声は少女の耳にに優しく響いた。
声はいかに重要か、分かる。
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