(童話)万華響の日々

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三浦綾子作品-12 「どす黝き流れの中より 」 その印象 

2015-08-26 16:53:47 | 読書三浦綾子作品

どす黝き流れの中より  「病めるときも」から 三浦綾子 朝日文庫 昭和53年発行

本作品は腹違いだったかも知れない妹にまつわる「私」の想い出の記である、日支事変の頃、

妹の美津子を含めて一家は樺太に暮らしていた、週に2日は遊びに来て父と碁を打っていた米屋

の小父さんがいた、小父さんは母と仲が良かった、三歳の美津子は小父さんになついていた、

それがある日のこと、美津子を連れて行方をくらましてしまった、戦後十年も経っても行方は

トンと不明であった、 生きていたら十九歳のはず と娘を案じながら母は52歳で死んだ、

「私」は高校教師と結婚しており卒業生が遊びに来たがその中の一人が何と美津子であった

のだ、苗字は大村でまさしくあの米屋の小父さんの子供となっていた、そして私は炭鉱の町

にある大村の家を訪ねたときには美津子が大村と母の娘であるという確信を抱いた、

私は美津子を父に合わせた、だが小さくて肉親の顔を見たこともなかった美津子は嬉しそう

ではなかった、大村の家に帰る途中で炭鉱の落盤事故が起こり大村は死ぬ、美津子の悲しみは

極限に達した


 再会の美津子を巡って数々のことが目まぐるしく起きた、彼女の結婚、それは夫の不倫とい

う不幸な出来ごとだけでなくその相手が事もあろうに死んだ実兄の妻であったこと、更にこの

義姉は父の商売と家・財産を乗っ取り父をも誘惑して関係を持っていたというドロドロした

多重関係を渦巻かせていた、このようなドス黝い地獄のような家族関係に耐えきれず美津子

父の家を出たのであった、間もなく起きた彼女の養母の死と実父の死、そして美津子自身の

不幸な最期は呆気なく突然に訪れる


不倫の娘、そして戻った家での家族間の地獄絵図、とりわけ美しい面立ちのゆえに一層薄幸

だった美津子の人生、心も純粋で幸せは金や見掛けの繁栄ではないと信じていた、驚くべき

ことに自分を裏切った夫を最後まで愛していた、

ドス黝いのは炭鉱の川ではなく人の心だと呟いた短くも純粋無垢に生きた美津子の人生、・・・・


この小説は三浦綾子の傑作といわれた「氷点」の流れを汲むと思える重いテーマ「愛とは何か、

生きるとは何か」、複雑な愛憎関係をくぐり抜けた暁に一種厳かで静謐な読了感に浸る

注記  「どす黝い」とは、青黒いの意味


三浦綾子作品-11 「奈落の声」 その印象 

2015-08-21 10:05:50 | 読書三浦綾子作品

奈落の声 「病めるときも」から 三浦綾子 朝日文庫 昭和53年発行

三浦綾子の作品の中では貧しい旅芸人の一座を扱った珍しいものだ、北海道の某炭坑町を

訪れた旅の一座、その名も「沢野清十郎一座」、座長の父と名子役を演ずる息子 清志と

の間に起こった悲劇、清志の母は夫に愛人ができたことに耐え得ず家出し行方不明、清志

は孤独、旅先で小学校に二三日だけ出席して次の興行地へ旅立つ、故に清志に友達のでき

る暇などなく、いわんや親身になって守ってくれた教師などかつて一人もいなかった、

だが、今回は違った、担任教師の高津真樹子はクラスで虐められている清志をかばってくれた、

そして彼女はいなくなった母に何故か似ていた、清志は初めて母以外の女に親密感を抱く、

  ところが父 清十郎は常日ごろ息子に対して暴力的でありひがみっぽくいじけた性悪

な親であった、彼は清志が学校でまじめに勉強に励むことをよく思わず馬鹿にさえして

いる、旅役者に学問など不要だと思っている、従って担任の高津真樹子には憎悪を抱い

ていた、さて清志は優しくされた真樹子の胸で泣きじゃくり彼女のシャツを汚して

しまい何とか弁償したいと思っていた、ある洋品店のショウウインドウに彼女にあう

シャツを認めたことから予期せぬ事件が起こってしまった


 このドラマ自体が旅芸人一座の演じたお涙頂戴的お芝居のようだ、いたいけな子供役者

は時代遅れで女癖の悪い座長の父親ときっぷのいい女教師の間に挟まれ、生まれて初めて

受けた親切とそれを素直に消化でききれなくて成長できないもどかしさに泣き叫ぶ

という最後である、観客は子役に同情して一緒に泣き性悪の親父に怒りをあらわにする、

ここで重要な立ち回りは女教師のとった行為である、清志は女教師がつい感情的に吐き

捨てた言葉に傷つく、中途半端な親切はかえって仇になる、いっそ中途半端な優しさを

かけないほうが良かった、もし親切を施すならば最後まで注意深く徹底的でなければ

ならなかった、

 作者にとって隣人愛をどう描くか難しい課題だったと思われる


映画   チャップリンからの贈りもの   フランス   2014年

2015-08-19 17:34:41 | 映画の印象

実に良く出来た映画だ、チャップリンの作品の幾つかを織り込みながら実際に起こったチャップリン墓泥棒事件をテーマにしてチャップリンの作品群に付け加えてしまった

全文を別ブログに掲載しています、下記をご覧下さい
⇒「映画の真相とその隠された深層」


三浦綾子作品-10 「羽音」 その印象

2015-08-17 21:22:09 | 読書三浦綾子作品

羽 音 「病めるときも」から 三浦綾子 朝日文庫 昭和53年発行

東京から北海道へ転勤してきた堀川慎二と妻の紗基子、本来ならば夫の栄進であるが

都会育ちの贅沢になれた紗基子は地方の生活が馴染めず東京に帰りたい、家事さえ放り

出してホームシックに陥った挙句慎二と言い合いの末、長男の文夫を連れて帰ってしまった、

そんな折、慎二は会社の部下 石井律子に惹かれるようになる、紗基子とは正反対の慎ま

しやかで目立たないがシッカリ仕事をこなすタイプ、彼は律子を誘って食事へ、妻の我儘

にウンザリしていた慎二は律子を口説くが・・・・律子と二回ほどの食事を重ねたが彼女は

ある日突然辞職願と共に手紙をおくってきた、そこにはごまかしの効かない痛切な思いが

したためてあった、

  この律子という女の考え方、人生観はこの二十一世紀の現代日本にあって殆ど絶滅した

かもしれない女性の在り方と思われる、それと対する慎二なる男の在り方は意外にも現代

も変わらないように思う、何故か? 男は古今東西余り変わっていなく浮気っぽい、だが律子

のような性格の女には何か永遠の世界に連なっている尊さが感じられる、

本書の中でもヒルティの幸福論が慎二から律子に贈られる、その本論には立ち入っていないが

律子が代弁している、それは人の立場を思いやる、人を害すくらいなら自分の方から遠慮する

というものである、愛するからこそ去るという一見寂しいもの、自己犠牲の生き方である、

こういう生き方は他人が強要するとおかしい事になる、あくまでも自発的でないと不自然となる


映画  マジック・イン・ムーンライト アメリカ/イギリス     2014年

2015-08-09 15:06:35 | 映画の印象

実に軽快な恋愛劇である、美男美女の主役の二人がコミカルに演じてくれて観る者も虜にさせられる、マジシャンには仕掛けがあり、霊媒師には嘘がある

全文を別ブログに掲載しています、下記をご覧下さい
⇒「映画の真相とその隠された深層」


暑中お見舞いいたします

2015-08-08 20:51:44 | 千年大災害と脱原発・核廃絶推進の闘い

暑中お見舞い申し上げます

この季節のご挨拶が実に空虚に聞こえるほど

今の日本の夏は狂ったように熱過ぎで熱中症で病院へ入院した人、死亡した人、 

どれだけ出るか、今だかつてない勢いです

加えるに安保法案、集団的自衛権の改憲解釈(違憲かどうか)問題がどうなるのか

国会審議で頭の痛い問題でますます暑苦しいですね

みなさん、適宜な冷房と水補給に努めて熱中症を防ぎ、集団的自衛権の廃案を求め、

猛暑の夏を乗り切りましょう


映画  マッドマックス 怒りのデス・ロード オーストラリア    2015

2015-08-01 16:06:55 | 映画の印象

主役はドラマではなくその脚色つまり演出である、

先ずバトルに調和させた音響というか音楽、これが傑作である、

打楽器やシンセサイザーを組み合わせたバトル交響楽とでもいおうか、

音楽だけ聞いていても十分に雰囲気に浸れる

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