池波正太郎著「鬼平犯科帳」は文春文庫から全24巻が出ている。いくつかの時代劇はテレビで見ていたが「鬼平犯科帳」も主役が何人か代わって同じ名前の作品を次々に観てきた。テレビも好いが小説を読まないと本当のところが分からない。それで図書館利用で2冊ずつ借りて読み始めた。丁度コロナ禍に巻き込まれて借りれない時期もあった。しかし、緊急事態宣言解除で図書館利用が可能となって読書を続けることができた。この「鬼平」は24巻ありつい最近全部読了できた。足掛け3年位かかった。読書は好きであったが、最近は視力が落ちて老眼鏡や拡大鏡を活用しないと読めない。そのため眼も疲れるし、読む速さは頗る遅い。それでこんなに時間がかかってしまった。
兎に角引き込まれた。コロナ禍の自粛期間を鬼平で過ごしたみたいなものだ。殆どが短編であるが、長編が最後の方に3件ぐらいある。最後となった長編「誘拐」は作者が逝去されて未完となってしまった。これは残念である。結末が分からず想像するしかない。未完となって忽ちドラマの登場人物たちが一挙に消え去ったような気がする。長谷川平蔵、妻の久栄、密偵の彦十、五郎蔵、おまさ、粂八、お熊ばあさん、佐嶋、木村忠吾、他の与力や同心、あまたの盗賊たち・・・・消えてしまった。特に最後の未完の「誘拐」では囮のおまさがどうなったのかが気になるところであった。だが江戸情緒もたっぷりと味わうことができた。今の東京がかつて江戸と呼ばれたころの風情が説明されていてよい。正当な盗賊の三カ条というのも面白い。盗みにも美しい盗み方がある。その反対の急ぎ働き。全巻を読んでよかった。