国立新美術館(六本木)で開催中の「アカデミア美術館所蔵のヴェネツィア・ルネッサンスの巨匠たち」を観た、1500年前後から1600年にかけての45作品が展示中だ、新約・旧約聖書から得られた題材の堂々たる絢爛たる絵画ばかりだ、自分が特に感銘を受けた作品について感想を述べる、
展示場に入るとすぐに目に入ってくるのがポスターの看板的な「聖母子(赤い智天使の聖母)」ジョバンニ・ベッリーニ1485-90年である、幼子イエスが見つめる母マリアの頭の上には赤色の子天使たちが飛翔している、聖母の顔は優しく慈愛に満ちイエスの表情も信頼に満ち穏やかである、同じ題名の「聖母子(アルベルティーニの聖母) ティツィアーノ・ヴェチッェリオ 1560年ごろ は雰囲気ががらりと変わって上空に光る天国の輝き以外は暗黒に近い暗さの中に母マリアと幼子イエスのみが光を受けて浮かび上がる、闇の支配するこの世に与えられた神のみ子イエスを表現している、劇的な表現である、
そして圧倒的な偉大さをもって観るものに迫ってくるのが大カンバス(410×240cm)に描かれた「受胎告知 ティツィアーノ・ヴェチッェリオ 1563-65年」である、まずその大きさに驚く、よくぞ運搬できたものと感心、畏怖するマリアを祝福する大勢の天使たち、それは幻想的でおぼろげであり天国から射す光の輝きが絶対的な存在を示しているようだ、
一方、女性美を遺憾なく表現しつくしたように思われるのが「ヴィーナス ティツィアーノ・ヴェチッェリオと工房 1555-65年」である、黒衣で下半身を覆ったヴィーナスはぞっとするほどの官能美に溢れる、「パルツォ帽をかぶった女性の肖像 ベルナルティーノ・リチーニオ 1530-40年」もまた美しい女性像であり、現代に生活する女性かと見まごうほどだ、1500年代の絵画がこれほど写実的で生き生きし、輝き溢れる美に満ちていることはイタリア・ルネッサンスの特徴であろう