哲仙の水墨画

デジカメの風景写真、四季の草花、水墨画、書、短歌などを楽しみます。

谷底に 子規(書)

2007-01-16 07:44:08 | 
谷底に届きかねたる落葉かな        正岡子規

 樹木の葉が自然界の摂理で寿命尽きて落下することはまずない。外からの力、すなわち、風の力で、少しオーバーに言えば、無理に振り落とされるのが葉の宿命であろう。この句には風の語はないが、山の斜面に張り出した枝の葉が、真下の谷に落ちかねて横へ流れていく。微風でもない。木枯らしでもない。葉を運ぶ程度の風が読み取れる。

播州安志加茂神社(写真)

2007-01-15 06:21:21 | 写真
加茂神社干支にちなんで参道に
稲穂を纏ふ大き猪       樋田哲夫

 播州安志(あんじ)加茂神社は初めてである。中国自動車道沿いの山崎I・Cに程近い。毎年その年の十二支をこしらえることで知られる。稲穂のイノシシ2頭が参道に参拝者を迎えてくれる。1月10日に訪ねたのに稲穂が少しも荒らされていないのは不思議だ。この時期すぐにスズメ、ムクドリ、ヒヨドリの格好の標的になりやすものだが。

福寿草(墨彩画)

2007-01-14 07:52:31 | 墨彩画
何事も縁起かつぎて初春の
目にも耳にもよき福寿草      樋田哲夫

 日本人は何でも縁起に結び付けて担ぐ国民性があるかもしれない。正月の縁起物だけでも数が多い。福寿草もそうだ。まず、名前がいい。字もいい、だから口にする言葉の響きも耳によい。新暦の正月には花はまだ早く、促成栽培のものとなる。露地物は旧正月ごろ鮮やかな緑の葉に黄の花を咲かせ正月の花だ。今年は2月18日。 にほんブログ村 美術ブログへ 

水鳥の 鬼貫(書)

2007-01-13 07:51:22 | 
水鳥の重たく見えて浮きにけり      上島鬼貫

 水鳥といえばチドリやカモメも含まれるが。この句ではカモ類を指す。大阪ではカルガモを除いて11月中旬には川や池に飛来する。鬼貫が生まれた伊丹市昆陽(こや)池はカモの飛来することで知られ、公園となっていることから、住民の餌付けで手の届くまでに来て子どもたちが楽しんでいる。鬼貫が見た水に浮かぶカモを重たく感じ、それが浮いていることに不思議に映ったのであろう。

岡山の和気神社(写真)

2007-01-12 07:20:33 | 写真
清麻呂を神とあがむる人々に
笑みて迎ふる石の猪         樋田哲夫

 清麻呂の生誕地・岡山県和気町に和気神社があり、今年は亥年で出かけた。朱塗りの橋を渡ると大きな清麻呂像と石の狛(こま)イノシシが参拝者を迎える。清麻呂が道鏡に謀られて九州に流されたとき、足腰を痛めて難渋していると、300頭のイノシシが現われ護衛して無事到着した由来により、清麻呂を祀(まつ)る神社にはイノシシが欠かせない。

子だくさんのイノシシ(墨彩画)

2007-01-11 06:20:24 | 墨彩画
悪しき名の猪なれど子の多く
安産なるは犬にぞ勝る       樋田哲夫

 犬の出産は安産であることから、人間もそれにあやかろうと妊娠5ヶ月目の犬の日に着帯を行う。が、イノシシも犬以上に多産で安産である。しかし、夜間山から田畑に出没し、農作物を荒らしまわる害獣として嫌われ、人間との攻防に知恵比べするほどだ。今年は亥歳しばらくもてはやされる。 にほんブログ村 美術ブログへ 


冬ごもり 蕪村(書)

2007-01-10 05:33:22 | 
冬ごもり心の奥の吉野山      蕪村

 桜の名所吉野山は奥千本、上千本、中千本、下千本の32000本が高低差700㍍を下から咲き始め1ヶ月間楽しめる。ピンクに染め上げられた吉野山を遠くから眺めると、春霞に包まれたようになる。西行法師がこよなく愛したのもうなずける。寒くて家の中に閉じこもっていると、つい、吉野山の華やいだ桜の光景が浮かんでくるなあと、春を待ちわびている。

丹波七福神めぐり・その2(写真)

2007-01-09 08:12:02 | 写真
福禄と寿老の神のあまりにも
似たる姿に戸惑ひにけり       樋田哲夫

 七福神の一つ福禄寿を祀(まつ)る篠山市の妙樂寺を訪ねて驚いた。長頭で短身、杖を持った石像が迎えてくれた。そのイメージは寿老人に酷似していたからである。共に中国の道教から来ていて、人望と長寿の神である。日本では水墨画の画題として輸入されたものらしい。まず単独で社寺に祀られることは少ない。福禄寿とはめでたい三文字が使われて縁起がよい。

台風なみに白魔(水墨画)

2007-01-08 08:17:25 | 水墨画
台風の如くに荒れて列島を
白魔の襲ふ松の内から      樋田哲夫

 台風並みに発達した低気圧が日本列島を新春から激しく襲った。特に北国では相当の積雪を見た。雪不足で悲鳴を上げていたスキー関係者は喜んでいるだろうが、列車ダイヤやフェリーの欠航が相次いだ。北海道では民家や倉庫に被害も出た。最近の気象情報は数日前から荒天になることを報道していて、精度の高さも上がったものだ。昔とは大違いである。にほんブログ村 美術ブログへ 

よく光る 鬼城(書)

2007-01-07 09:30:27 | 
よく光る高嶺の星や寒の入り        村上鬼城

 鬼城は因幡鳥取藩士の江戸藩邸に生まれ、高崎で育つ。子規を深く尊敬し、大正初期から世に名を知られた。 きのうが寒の入り。冬は空気が透き通り星座の観察には最適といわれ、天門ファンは夜空を仰ぐ季節だ。鬼城が目にした高嶺の際立って明るく見えた星は宵(よい)の明星であろう。今年は天体ショウが5回あるという当たり年。

丹波七福神めぐり(写真)

2007-01-06 08:34:19 | 写真
猪の新しき年幸あれと
七福神の丹波路を行く        樋田哲夫

 一昨年は京都七福神へ、昨年は高野七福神へ、今年は丹波七福神へ出かけた。3年連続どこかの七福神へ参ることになる。正月に宝船に乗った七福神の絵を枕の下に入れて寝るとよい初夢を見るという。正月早々テレビばかり見て家にいるのもなんだから、どこかへ出かけようかと心は単純である。写真は寿老人が祀(まつ)られている大勝寺。

空を舞う2羽のタンチョウ(水墨画)

2007-01-05 07:54:59 | 水墨画
タンチョウは契りをするか添ひ遂げて
一途に愛を貫き通す           樋田哲夫

 雪原に優雅な舞を見せるタンチョウは一生相手を変えることはない。その舞こそ求愛行動であり、愛を確かめ合う最高の表現である。静かではない。激しい声を立て合う。オシドリは夫婦円満の象徴とされるが、意外や自由奔放に相手を変えるという。さて、人間はどちらの鳥に近いだろうか。個個人己の胸に問うべし。  にほんブログ村 美術ブログへ

門松や 一茶(書)

2007-01-04 06:11:58 | 
門松やひとりし聞けば夜の雨        小林一茶

 江戸後期の人。一茶の生きた時代は自動車、テレビ、ラジオ、飛行機などの人間が作り出す音はない。自然の生み出す風、雨、雷、動物の泣き声などである。家督を弟に譲って、15歳で江戸へ出て俳句を学んだ。おそらくこの句は江戸に出てのものと思うが、明かりもほとんどない一人の暗い部屋で板戸を打つ雨の音はひとしおだったのだろう。

正月はスーパーのイベントで(写真)

2007-01-03 07:54:00 | 写真
雨ふれば行き先変えてイベントの
三味に聞き入る正月二日       樋田哲夫

 正月二日は京都の伏見稲荷大社、平安神宮、護王神社(イノシシ神社)、岩清水八幡宮を予定していたが朝から雨。出かける気にもなれず、近くの大型スーパーへ。午前11時のイベント広場で津軽太棹三味線の演奏を聞いた。全国大会2度の優勝との女性司会者の説明の竹田傑と2人の女性で5曲、30分。力強い津軽三味線はいいものだ。

ウリ坊(水墨画)

2007-01-02 08:18:13 | 水墨画
神体といふ三輪山を猪の
我がもの顔に荒したる跡        樋田哲夫

 イノシシは前後の見境なく無鉄砲に突進する動物と見られていて、まっしぐらとか猛進などの形容をされるが、なかなか警戒心が強く人里へ出てくるときの夜行の行動は頭の良さを見せ、人間のほうが頭を痛める。奈良県桜井市の大神神社は拝殿背後の三輪山(467)がご神体である。現在は入山が出き、登る道中にイノシシの掘り返した新しい跡がある。神を冒涜(ぼうとく)することはなはだしい。  にほんブログ村 美術ブログへ