キカクブ日誌

熊本県八代市坂本町にある JR肥薩線「さかもと駅」2015年5月の写真です。

日本人とは何者なのか

2023年12月22日 | ☆学ぶ!

このNHKの番組よくまとまっていて面白かった。
ヒトゲノムが解明されて以降、遺伝子研究はものすごいスピードで進歩しているようですね。

日本人のルーツについても、古代人の骨からDNAを採取する機会が増えていること(技術の進歩もあるのでしょうね)と合わせ、これまたどんどん進んでいるみたいで、ワクワクです。


これまでは、
日本の先住民=縄文人に、弥生人=渡来人(稲作や鉄を持ってた人々)が合わさって今の日本人につながる、という「二重構造モデル」 がスタンダードでしたが、最近の研究ではさらに詳しい遺伝子解析が行われ、

縄文人+弥生人+古墳人 という「三重構造モデル」が最先端のようです。
古墳人というのはざっくりしすぎですが、古墳時代と言われるあたりに大陸などからいろいろな種類の人々が、かなりの人数で日本列島にやってきて定住したということらしい。
日本の弥生時代以降、ユーラシア大陸ではいろいろな文明が勃興し、大きな帝国もできたり、戦乱が絶えなかったことを思えば、いろいろな人々が戦乱を逃れ、日本列島までたどり着いたと考えても不思議はないですね。



さて、今月まで神奈川大学の社会人講座で
「日本を知るとはどういうことか」という講座を受講していました。

私たちがなんとなく心に思っている「日本人」って何だろう?
という素朴な疑問から受講してみました。

法的には日本人=「日本国籍保持者」でしょうけど、ここではそういうことではなくて、

・主に日本語を使う日本文化の担い手としての日本人
・日本民族(なんてものがあるのかな?)
・むかしから日本列島に住み続けてきた人間集団としての日本人

というような意味合いでの「日本人」のことらしいのですけど、
定義すらとても難しい。

柳田国男、津田左右吉、宮本常一、網野善彦

授業はこれら4人の学者の研究や思想を通じて、日本とは何かを知るってどんなこと?という話を聞きました。大きなテーマでまったく学びの入り口に立っただけで終わっちゃった感があったのですが、とても面白かったです。

そんなわけで私としてもずーっと興味のあるテーマなのですが、

「日本は万世一系の~~~」とか「ヤマト民族の大和魂」とか「日本人の伝統的思考」とかって聞くとなんだかちょっとそれホント?と違和感を感じることもあり、じゃぁ私は何者なんだろう?という問いに、科学の面から答えてくれるものとして遺伝子研究は面白いなと思うのです。


日本は太平洋という大海原の手前の列島で、6~7万年前にアフリカを出たホモサピエンスがいろいろなところで文明文化を作りながら移動してきたなかでの一種の「どんつき」なんでしょうね。ヒトが日本にたどり着いたのは3万年前ごろ。それが気候的、地理的条件により、大陸と隔絶されたり交流したりして今の日本列島に住む私たちにつながっているわけなのですが、その太古の様子がわかったら楽しいですね。

よく「島国根性」と卑下することもあるし、島国だから「日本は世界でも珍しい単一民族国家」と言ってみたりするうっかり政治家とかもいるほど、均質な人々が住んできたと思いがちです。

でも、遺伝子から見た古代の日本は、現代日本からは考えられないくらい、言葉もごちゃごちゃ、文化もごちゃごちゃ、もしかすると肌の色など見た目もいろいろな人々が、あちらこちらに分かれて住み着き、混沌としていたかもしれないのだそうです。

ワクワク。





今、柳田国男の「先祖の話」という本を読んでいます。
(授業で取り上げられていたので)
その中に出てきた話にハッとしました。

私たちは、人が死んだら極楽浄土に向かって成仏する(浄土真宗?)とか、四十九日すんだら成仏。とかいうのですが、
それでもお盆になると先祖の霊が返ってくるから迎え火送り火するんです。
成仏してたら帰ってこないはずなのに、そこに矛盾を感じないで1000年くらい過ごしている。

ほんとですね。

仏教は日本人の深く浸透していたのかと思ったけど、仏教伝来以前(おそらく)の日本人の先祖霊のとらえ方を変えることはできてないのでしょうね。

面白い。
柳田国男は風習などに残るものをつなぎ合わせて、「日本とはなにか?」「日本人はどこから来たのか?」を探ろうとしていたのですね。




【おまけ】
「日本を知るとはどういうことか」講座内容メモ

日本国民である親から生まれ、日本国籍を持ち、日本人として育ってきた者で、日本とは何かということを十分に知っているかと問われて、確信を持って知っていると答えられる者はどのくらいいるのだろうか。知っているつもりだけであったり、知っているだけのわずかな知識をすべてだと勘違いしていたりすることはないだろうか。私自身について考えても、知っているかと正面から問われて、とても「はい知っています」とは答えられない。第一、「知っているか」とはどういうことを言うのかも明確には分からない。日本とされる地域の隅々まで行ったことがあるわけではないし、日本に住んでいるすべての人を知っているわけでもない。有史以来の主な出来事に限ってもどこまで知っているのか心もとない限りである。せめて、明確な方法意識をもって、知りうる限りの資料を集め、日本を知ることに努めた優れた先人の業績を解読し、日本を知るとはどういうことなのかを考える指針を伝えたいと思う。

講座日程
2023/10/07日本を知るとはどういうことか
日本を知るとは、現在日本とされている地域とそこで生きている人々の生活や過去の出来事のすべてを知り尽くすことでない。第一そんなことは不可能だ。だとすれば、何を知ることが重要なのか。まず、その問いについて答えるとともに、何故四人を選んだかを明らかにする
2023/10/14柳田国男の民族観・日本論・稲作農耕民を中心とした民俗研究について
柳田の民族問題についての考え方、国家観を探り、日本民族の起源や民俗の特性についての見解を分析する
2023/10/21前回の続き
2023/11/04津田左右吉の歴史学
津田の日本古代史・記紀神話研究の分析、「文学に現れたる我が国民思想の研究」が明らかにしたものは何かを検討する
2023/11/11前回の続き
2023/11/18旅人宮本常一が見た日本
稀代の旅人宮本常一は何を見ようとしたのか。宮本と調査・地域とのかかわり方について考える
2023/11/25網野善彦が見ようとした「非農業民世界」の問題
網野は、制度史・体制史ではない民衆を中心とした歴史像を提示しようとしたが、その歴史像は日本を認識することに対してどういう意味を持っているのかを考える
2023/12/02再度、日本を知るということはどういうことか、を考える。
多くの日本論・日本人論・日本文化論は、実感論的・経験主義的観点にとどまり、主観的議論に陥る欠点を免れていない。四人の研究業績を踏まえて、客観的に日本を知るための方法論の構築を試みる
講師紹介
橘川 俊忠
神奈川大学名誉教授
1945年生まれ。東京大学法学部卒業。専門は日本政治思想史。著書に『近代批判の思想』(論創社)、『歴史解読の視座』『日本の民俗学者― 人と学問』(以上、共著、御茶の水書房)、『奥能登と時国家研究編2』(平凡社)、『終わりなき戦後を問う』(明石書店)、『丸山眞男「日本政治思想史研究」を読む』(日本評論社)などがある。



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