キカクブ日誌

熊本県八代市坂本町にある JR肥薩線「さかもと駅」2015年5月の写真です。

「バスカヴィルのハウンド」和訳 4

2013年07月13日 |   └─和訳「バスカヴィルのハウンド」
さて、シャーロックの高速推理がまた展開していきますよ。



<凡例>
赤文字:英語がよくわからない、解釈できない部分。
青文字:(私のとっての)新出単語
紫文字:感想、原作(正典)との比較など。
灰色文字:ト書き
日本語として滑らかにすることよりも、なるべく語順どおりに直訳して英語のまま理解したいと考えています。



HK:Are you laughing at me, Mr Holmes?
僕のこと笑ってるんですか?ホームズさん。


SH:Why, are you joking?

なぜ?冗談でも言ってるんですか?


HK:My Dad was always going on about the things they were doing at Baskerville. About the type of monsters they were breeding there. People used to laugh at him. At least the TV people took me seriously.
父はいつもいつも話していました。バスカヴィルで行なわれていることについて。そこで育てられてる怪物のタイプについて。人々はいつも父を笑ってた。やっとテレビ局の人が僕の話をまじめに取り合ってくれたんです。

go on about:しゃべり続ける

SH:I assume did wonders for Devon tourism.

※ここよくわからなかったので、全文検索してみたら
I assume, did wonders for Devon tourism . というのと
I assume, it did wonders for Devon tourism. というのが見つかりました。it があると訳しやすいので、こちらを採用させてください。

僕が思うに、それはデヴォンの観光にとって非常なる効果があったね。

do wonders:to cause improvements or have a very good effect

JW:Yeah… Henry, whatever did happen to your father, it was 20 years ago. Why come to us now?
ええと・・ヘンリー、君のお父さんに何が起きたにせよ、それはもう20年も前だ。なぜ今ここへ来たんだ?

※ここでジョンはもう「ヘンリー」と親しげに呼びかけています。
ヘンリーはいまだに「ミスターホームズ」って言ってるのに。
これはおそらくあとで出てくる台詞を一言一句、正典と同じように言わせるためなんだろうとは思うのですが、シャーロックも「ミスターナイト」と言ってるのになぜジョンだけ、ファーストネームで??


HK:I’m not sure you can help me, Mr Holmes, since you find it all so funny!
あなた方が僕を助けてくれるか分かりませんね、ホームズさん、あなたがそれ全部をそんなに面白がるようなら(/馬鹿にするなら?)。


SH:Because of what happened last night.

それは、昨夜起ったことのためだ。

(※シャーロックはジョンの「なぜ今更ここに?」という質問の答えを言ってますネ)


JW:Why? What happened last night?
なぜ?何が昨夜起きた?


HK:How… How did you know?
どうして・・・どうして知ってたんですか?


SH:I didn’t know, I noticed. Came up from Devon on the first available train this morning. You had a disappointing breakfast and a cup of black coffee. The girl in the seat across the aisle fancied you. Although you were initially keen, you’ve now changed your mind. You are however, extremely anxious to have your first cigarette of the day. Sit down, Mr Knight. And do please smoke, I’d be delighted.
知ってたんじゃない。気づいたんだ。デヴォンから今朝の一番早く乗れる列車で上京した。(ロンドンに来ることを「上京」とは言わないですね。でもUpしてくる感じを出したかったのです)君はがっかりするような朝食を食べ、ブラックコーヒーを飲んだ。通路の向こう側の席の女の子が君を誘ってきた。君も最初は熱心だったものの、今は気が変わってしまった。君は、とにかく、非常に切望している、今日の朝一番のタバコを吸いたいと。座りなさい、ナイトさん。そして、どうぞお吸いなさい。そうしてくれれば僕も嬉しい。


anxious(to do):…したいと切望して.



HK:How on earth did you notice all that?

一体全体、どうやってそれをみんな気がついたんですか?


JW:It’s not important…
それは重要じゃない・・・・


SH:Punched-out holes where your ticket’s been checked.
君の切符が検札された場所の(が示された)パンチの穴。

※ここの文ちょっとよくわからない。
 「切符がチェックされた場所の穴。」ということは切符に駅名がいくつか書いてあって、デヴォンなりエクセターなりの地名のところに穴が開いてたから、そこから来たって分かったってこと?日本ではほとんどが自動改札で、有人改札でも切符に穴を開けることはほとんど無いんですが、イギリスの切符ってそんなシステムなんですか?それとも、やはり読み間違い?穴が複数形になってるし・・・

あれ?この where は特定の場所って意味じゃないのかな?
単に穴を修飾する節が後に続いているだけ?
「切符が検札されて、開いた穴」くらいの意味でしょうか?


JW:Not now, Sherlock.
今はやめろ、シャーロック。


SH:Oh, please. I’ve been cooped up in here for ages.
いや、たのむよ。僕はずーっとここに長いこと閉じ込められていたんだから。

cooped up:閉じ込められる

JW:You’re just showing off.
ただひけらかしてるだけだ。


SH:Of course. I am a show-off. That’s what we do. Train napkin you used to mop up the spilled coffee, strength of the stain shows that you didn’t take milk. There are traces of ketchup on it and round your lips and on your sleeve. Cooked breakfast. Or the nearest thing those trains can manage, probably a sandwich.
もちろん。僕はひけらかし屋だ。それが僕らの仕事だ。列車のナプキン、君がこぼれたコーヒーを拭き取るのに使った。しみの濃さがミルクを入れなかったと示している。ケチャップの跡がそれ(ナプキン)と君の口の周りと袖についている。料理された朝食だ。もしくはそういいった列車内で(提供)出来るもので最も近いのは、おそらくサンドイッチだ。


※That’s what we do.ってジョンも仲間に入りましたね!



HK:How did you know it was disappointing?

なぜ、がっかりするような朝食だとわかったんです?


SH:Is there any other type of breakfast on a train? The girl, female handwriting’s quite distinctive, wrote her phone number down on the napkin. I can tell from the angle she wrote at that she was sat across from you on the other side of the aisle. Later, after she’d got off, I imagine, you used the napkin to mop up your spilled coffee, accidently smudging the numbers. You’ve been over the last four digits yourself with another pen, so you wanted to keep the number. Just now, though, you used the napkin to blow your nose. Maybe you’re not that into her after all. Then there’s the nicotine stains on your fingers, your shaking fingers. I know the signs. No chance to smoke one on the train no time to roll one before you got a cab here. It’s just after 9:15, you’re desperate. The first train from Exeter to London leaves at 5:46 a.m. You got the first one possible, so something important must have happened last night. Am I wrong?

列車の中でその種以外の朝食がありますか?女の子、女性の筆跡だということは非常に分かりやすい。彼女の電話番号をナプキンに書いた。彼女が書いた角度から言えるのだが、彼女は君の通路を挟んで、はす向かい側に座っていた。そのあと彼女は下車し、僕の想像では、君はこぼれたコーヒーを拭くのにそのナプキンを使った。思いがけず数字がにじんでしまった。君は下4桁を別のペンでなぞって書いた。だから、その電話番号を持っておきたかったということだ。たった今、なのに、そのナプキンを洟をかむのに使った。おそらく君はもはや彼女にそんなに夢中じゃないんだ。そして、君の指にはニコチンのしみがあり、その指は震えている。僕にはその意味が分かる。列車の中ではタバコを吸う機会が無かったし、ここに来るまでのタクシーに乗る前にもタバコを巻く時間が無かった。今9:15過ぎだ。君はもう吸いたくてたまらない。エクセターからロンドンへの始発列車は、午前5:46発。君は出来るだけ一番早いのに乗った。だから、何か重要なことが昨夜起きたはずなんだ。間違っているか?


smudge:しみをつける,よごす.
that:それほど,そんなに.
be into:熱中[没頭]している,夢中になっている
roll:ここはsmokeとの並列なので、後に出てくるoneはいずれもタバコのことと思われます。巻きタバコを巻くという意味でのrollかと。正典バスカヴィルにも依頼人(正典ではモーティマ)に対して「あなたもご自分でタバコを巻いて上がると見えますね」的な台詞があります。




HK:No, you’re right. You’re…completely, exactly right. Bloody hell, I heard you were quick.

いいえ、あなたの言うとおりです。あなたは...完璧です。正確にあってます。なんてことだ。あなたは速かったって聞いていたけど。


SH:It’s my job. Now shut up and smoke!
それが僕の仕事です。では、黙って、タバコを吸うんだ!





依頼人がベーカー街にやってきて、席に着いたとき、依頼人の背景をどんどん推理して、さらにそれを披露するのはホームズの常套手段です。そうやって彼は依頼人の度肝を抜き、信頼させるように仕向けていくのです。
ワトスンもホームズのそのやり方には肯定的で、いつもスゴイすごいと思ってたようなのですけど・・・・ジョンは、違いますね。「やめろ」とか言ってます。「お前のはひけらかしてるだけだろう」と、否定的です。
この反応、おもしろいですね。
さっきのハドスン夫人へのおせっかい推理が後を引いてるのかな?

4 コメント

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Iとwe、myとour (ナツミ)
2013-07-15 09:50:57
ちょっと出遅れましたが、お邪魔致します!
YOKOさんがご指摘なさった"That's what we do"の「ジョンが巻き込まれてる」ところ、私もいつも気になってるんです。
日本語では、「私の」「私たちの」を省略することが多いので、いちいち訳すと冗長になってしまいますが、(原作の)ホームズも第三者と話す時、よくワトスンを巻き込んでweやourを使ってますよね。
その辺をきっちりさせるのがこの言語の特徴、と言ってしまえばそれまでなんですが(この記事のシャーロックも『速い』という評価にはきっちりmyを使ってますしね)、ワトスンが「数に入っている」のは彼のファンには何とも嬉しく、それを楽しみに頑張って英文に挑んだものです。

また原作の話になってしまうのですが、「空家の冒険」でホームズが221bを見ながら"our own old quarters""our own rooms"と繰り返すのが、私はとても好きです。最後の何年かはワトスンはいなかったにも関わらず、、「我々の部屋」という表現を使ったホームズにじんときます。二人がそれぞれに「一人での冒険」を経てきたからこそ、余計に古巣への愛おしさが滲んでいるように感じます。
こんな小さなところに無駄に(?)感動できるのは、英語ネイティブでないからかもしれません。(ガイ・リッチーの映画では、出て行くワトスンが飼い犬をmy dogと言うのをホームズがour dogと言い直すという場面があったので、ネイティブも気になっているのかもしれませんが)。

それから「ひけらかし」の件ですが、YOKOさんのご指摘通り、周りの反応が違いますよね。原作ではされた方も素直に感じ入ることが多いみたい。シャーロックのには、ジョンも周りも嫌な感じを抱くみたいですね。
総じて原作ホームズの方が外交術に長けている印象もあるのですが、「ひけらかし」を何年も見ているワトスンはジョンのように食傷しなかったのかしら。
「自分の作品」として描いているドイルの小説と、客観的評価を伴って描かれている現代版の脚本の違いもあるのでしょうね。
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何を重要視するか (YOKO)
2013-07-16 13:03:22
ナツミさんコメントありがとうございます。
この人称代名詞の部分、私これまであまり気にしてませんでした。別の方のブログでシャーロックのせりふについて討論していたときに、このWE についての話題が出ていて気がついたのです。なるほど。と。

人類学の研究でよく、どこかの部族にフィールドワークに入り、家族親類をどう呼ぶかなんていうところから、その社会が重要視している制度などが浮き彫りになるというのがありますが、原語っていうのはそういう部分が多々ありますよね。

シャーロックの訳をしてて思ったのは、ハリー(ハリエット)が姉なのか、妹なのか。緑の梯子を持ってるのは兄なのか?弟なのかということ。
日本語では上下が大事ですが、英語ではそのことは重視されてないのでは?
同じように、ILOVEYOUにはIもYOUもないと成立しないけど、日本語では「愛してます」といえば成立しますよね。あれ?「月が綺麗ですね」でしたっけwww

その原語の違いで、妙に萌えてしまうのですね。WEだ!OURだ!って。
そして言葉で言わなきゃいけないということは常に意識の上でも、所有者はだれか?とか目的語は誰か?主語は誰か?ということが、明確なのでしょうね。
おもしろいです。

空き家の冒険の該当部分、早速英語で読んでみようと思います。うるうるきますよね~。

そうそう、ナツミさん、「バスカヴィルのハウンド」和訳 5 のコメント欄によっしいさんが「元ネタ」情報を書いてくださっていますよ。
もしかして既に記事にしてらっしゃるかもしれませんが・・・。
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おもしろいです! (ナツミ)
2013-07-17 07:29:21
も、元ネタっ…!さっそくそちらの記事も覗かせていただきますっ!!

>家族親類をどう呼ぶかなんていうところから、その社会が重要視している制度などが浮き彫りになる

面白いですね!呼び名ではっきりさせないのは、きょうだいの中で年長であるかどうかが、その社会でさほど重要ではないから、なんですね。
例にひいてくださった(?)漱石の作品を読んでいても、長男に生まれるかそうでないかで、家族の中での扱いも生き方もまったく異なってしまう社会だったことがよくわかりますよね。(『月は~』は出典不明で諸説あるらしいですね。もし漱石の言葉として引用なさったのでなければ、的はずれでごめんなさい)

重要だからこそ強調することもあるし、逆に明らかだから省略できることもある。どこに「暗黙の了解」を求めるか、というのもあるのですね。言葉って、面白いですね。ホームズではないですが、ものごとの背景を読み解くのは本当に楽しいと思います。


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漱石ですとも (YOKO)
2013-07-17 17:55:56
勿論、漱石のつもりで書きました。
漱石は書いてないんですよね。
英文の授業でそう言ったとかいわなかったとか、そんな伝説じゃなかったでしょうか?

きょうだいの年齢の序列がそんなに重要じゃない社会というのが、なかなか想像つかないですね。

それと、重要だから言うのか、むしろ重要すぎて明らかだから言わないのか。
その視点も面白いですね。シャーロックの話からどんどん離れてしまいましたけど^^;

いまベネディクト来日中だというのに!
全然情報追ってない・・・うおおお。
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