おてんとうさんのつぶやき & 月の光の思案 + 入道雲の笑み

〔特定〕行政書士/知的財産管理技能士/国家試験塾講師等が生業の巷の一介の素浪人の日常

〔忍びの者〕? と〔学びの者〕

2023-10-22 | マンション管理関連試験等サポート   

 

本日の マンション管理士試験過去問学習 です

 

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                    ※ 問い方を変えて利用させていただいています

甲マンション管理組合Aの組合員であるBが所有する住戸部分をCに賃貸していた
ところ、当該住戸の道路側の外壁タイルが自然に落下して、通行人Dが負傷した。
この場合に関する次の記述につき、民法(明治 29 年法律第 89 号)及び区分所有法
の規定並びに判例による、正誤を答えよ。

 

1 Dは、土地の工作物の設置又は保存の瑕疵によって損害を被ったとして、そ
  の工作物の共用部分の所有者である区分所有者全員に対して、その共有持分
  の範囲で分割債権として損害賠償請求することになる。


2 Cが、共用部分の維持管理に関与できる立場になく、損害の発生を防止する
  のに必要な注意を払う義務がない場合には、Dは、Cに対して損害賠償請求
  をすることはできない。


3 外壁タイルの落下原因が、大規模修繕工事において外壁タイル工事を実施し
  た工事業者の施工不良にあっても、A及びAを構成する区分所有者全員が、
  Dに対して損害賠償責任を負うことになる。


4 甲マンションの建設当時から、建物としての基本的な安全性を欠いているこ
  とが原因である場合には、建物の建築を担った設計士、施工業者、工事監理
  者は、特段の事情がない限り、Dの損害について、それぞれ連帯して不法行
  為に基づく損害賠償責任を負うことになる

 

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1 について                         誤 り

 肢の場合 全員が 連帯して 債務を負います


下記 717条 ・ 719条 を 参照ください

 

 

2 について                         誤 り

         ※ 公式 では 肢1が誤りの肢であり ということは 本肢は正しい肢 
           となっているようですが 自身にはそのように理解することは 困難
           すぎますので 誤り としています
           誤り の選択は 比較的容易だったので 当然他は正しいとして
           問題にしなかったのか いずれにせよ 疑問だと考える方が圧倒
           的に少なく こともなしに過ぎ去っていった のか ? 

           おそれいりますが 下記 メモ を 参照くださるとサイワイです

 

3 について                         正しい

 肢の場合 他に責任を負う者が存在したとしても 工作物責任を免れることはでき
 ない(自然現象・第三者の行為・被害者の行為などの影響があり それらにも原因
 があるとした場合であっても 責任を免れることができるということにはならない
 ただし 求償できる場合もある)
 管理組合自体も 717条1項の占有者に当たる とされます
 管理組合は 管理に懈怠などあれば Dに一般の不法行為責任(709)を負うこ
 とにもなる

       ※ 判例の概要
            民法717条1項が責任者を第一次的に占有者と定めて
            いるのは、損害の発生を防止するのに必要な注意を直接
            払うことができる地位にあるためと解される。
            管理組合は、区分所有者から共用部分について管理を任
            されており、管理組合も損害の発生を防止するのに必要
            な注意を直接に払うことができる地位にあるといえるの
            で、占有者に当たると解するのが相当である。
                        (東京高裁平成30・7・4)


下記 709条 ・ 717条 を 参照ください

 

 

4 について                         正しい

  肢のような場合について それぞれ連帯して不法行為に基づく損害賠償責任を負うこと
  になるとの 判例があります

          建物の設計者、施行者及び工事監理者は、契約関係にない居住者等に
          対する関係でも、建物としての基本的な安全性が欠けることがないよ
          うに配慮すべき注意義務を負い、この義務違反による瑕疵が原因で生
          命、身体又は財産を侵害された居住者等に対して、特段の事情がない
          限り不法行為による賠償責任を負う   (最判平19・7・6)

 

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                記        ※ 条文等に省略ある場合があります

第五章 不法行為
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じ
た損害を賠償する責任を負う。

 

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条 
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物
の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償
しなければならない。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又
は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

 
(共同不法行為者の責任)
第七百十九条 
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する
責任を負う。
共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

 

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 メ モ  
肢2 に 関して 

 

・・・損害の発生を防止するのに必要な注意を払う義務がない場合には、
   Dは、Cに対して損害賠償請求をすることはできない。

仮に 専有部分のホトンドが賃貸されていて 貸主さんたちは遠方におられ
おおよそ 生活資金に余裕がない方が多く 管理組合の会計もヤリクリたい
へん などというようなマンションで 事故に遭われた場合 設問でのDさ
んのような方は ビックリ するでしょうね
 『注意を払う義務がないからなんて 法律にあることを そんなふうに
  一方的に変えて主張してしまうなんて 
  どういう根拠で そちらの都合だけで被害者に対して言えるのでしょう
  か ?』 

 

問題を作成する場合は 求める回答の根拠として 法文・通有の判例(判例による と問題
に示され) あるいは 少なくともイワユル通説である学説 あたりであってほしい とい
うか そうであらねばならない(そうでなければ受験者はメンクラウだろうに)と 痛切に
思うことがあります

 

工作物責任(民法717条)の基本的な裏付けは 〔危険責任〕 だというのが 一般的な
解釈 だと 自身 は 理解しているのですが ・・・
皆さんは いかがですか ?

《占有者において共用部分の維持管理に関与できる立場になく、損害の発生を防止するのに
 必要な注意を払う義務がない場合には、損害賠償請求されない》

というような立論での問題であると 選択肢に登場すること自体に エッと思ってしまうの
で 当然 ✕ と 自身なら回答するだろうな と 思います

ご存じのように 〔危険責任〕とは 〈本来安全であるべき土地の工作物がその信頼に反し
て危険である場合は その工作物を占有または所有する者は それによって生じた損害につ
いて もろもろの情況にかかわらず当然に責任(占有者中間責任・所有者無過失責任)を負
うべきもの
〉 

ということですから
  
必要な注意をした場合に占有者は免責される(中間責任)というのは どのように条項を読
んでも 占有者に注意義務があることを前提にしてのことだ と 理解されるでしょう
注意義務がない場合には
というような前提(そのような場合は 占有者にはあたらない などという表現も)は 
あり得ないのでは と 解されます  
維持管理に関与できる立場にないからとして損害の発生を防止するのに必要な注意を払う義
務を緩くすことさえ???    
さらに そもそも注意を払う義務がない とすることを想定してみるとか そのように免責
される者であるからとして被害者に向けての盾(いわば身内の事情を規準にしてしまう)に
でき得るものなのかどうか 工作物責任というものを考えてみて 答えは明らか と 思う
のです

もっとも 概ね次のような内容が 某基本書にはあるようですが これを一般通有の根拠と
するということは いかがなものでしょう ? 国家試験の肢に登場しても受験者の困惑の
誘因になることなどあり得ないこと でしょうか ?
「・・・賃借人は専有部の瑕疵による損害については民法717条1項に基づいて占有者と
 して賠償責任を負う、けれど、賃借人は共用部分の占有者ではあるがその管理には参加し
 ないのであり、その意味では共用部分の瑕疵に対して条項でいわれている<損害の発生を
 防止するに必要な注意>を払う義務については、限定して考えざるを得ない
 という内容
     
      そこにおいてさえ 必要な注意を払う義務をなくする とまでは
      記されていません けれど

     
     ※ 賃貸した場合であっても賃貸人間接(代理)占有をする
         〔土地工作責任を負うべき占有者に 間接占有者は含まないとされている
                                     (判例)〕
       賃借人(代理占有者)は専有部を現実の占有で直接占有する
         〔専有部分の瑕疵による損害について 717①に基づき占有者として
          損害賠償を負うが 共用部についても 当然 現実の占有の直接占有
          者である〕

       家族等が本人のために物を所持していても その所持を通して本人の直接占
       有ととらえられるので 独立した支配としての占有は認められず代理占有も
       成立しない(占有機関・占有補助者とされ 占有者ではない)

       法人の代表機関が所持するばあいも 直接占有者は法人のみであり 特別の
       事情があるなら代表機関も直接占有者とされることがある    (判例)

 

それにしても 損害の発生を防止するのに必要な注意を払う義務がない場合 などとまでの
文言を肢に登場させてしまっては ソモソモ想定し得ない立論を前提の肢であるので 当然
誤りの肢だと判断し 誤りの肢と選択した受験者に回答において非がある などとは 到底
言えないのでは と 考えられるのです
所有者の責任が生じるのは 占有者が注意を尽くしていたことを主張・立証して免責された
場合に限られています
第一次的に占有者が責任を負担する立場にあるのは 瑕疵による損害危険に対処し得る立場
にあるからです




自身は " 忍びの者 " ではありませんが 一介の" 学びの者 " ではあります
                           「モチロン 言葉遊びの表現 です
                            おもしろみ が 足りなすぎますが」
学びの者 として まして 一応 学びの結果を応用して業務とさせていただいている者
として アイマイな姿勢は 良くないことだと 思わざるを得ません
以前は どちらかというと ズバリ 言を発するということが 実は苦手 で 後悔の件を
いくつか抱えていました(特に マンション管理相談等において)
が 最近は 『言うべきことを避けて過ごしてしまっているより その折に キチンと言
葉にして示すべき』 と 思えてならないので そのように努めているつもり です

 

令和2年 問2 では 誤っているものはどれか と 問われました

肢1が誤りであるのですが 自身の推測ですが 肢2 との選択で 悩んでしまった受験生
さんも少なからず おられたと思われます(自身も その一人 です  ダッテ 肢自体に
首をヒネラセラレ 数分 体は微動もしません それほど ???? でした)
《珍しいことですが 肢の法意・事例を判断して というより 肢の文章自体が ソモソモ 
 論外すぎる立論に拠っている ということだったので》
自身の判断では この肢の存在で 問2 は 回答不適 として没問となっても不思議はない
のでは と 思っているのです

 


本日の問題は

令和2年度 問2 です