おてんとうさんのつぶやき & 月の光の思案 + 入道雲の笑み

〔特定〕行政書士/知的財産管理技能士/国家試験塾講師等が生業の巷の一介の素浪人の日常

各人が と 区分所有者全員で との差

2021-12-25 | ◆ マンション管理業務  《 全般 》

 

マンションでのお話です

本日の記事に関しての質問・相談も 少ないですが あります

 

 

管理組合の理事長の不始末についての対応のあり方も 組合員個々に 考え方が

異なるのも 無理もないかもしれません

それぞれの 人生観・価値観などがあります

《他の組合さんはどうであろうと 私は 許すことができません》

という声もあり得ます

 

 

理事長の任務に背くようなことを為して 管理組合に損害を与えてしまった

損害賠償を請求するために訴訟を起こす という場面でも マンション管理組合

という法的な性格上 次のような問題があります
(いつも述べさせていただいていますが 専有部所有者各人が レッキとした
 所有権者で構成されているので 団体 とはいっても その性格が特殊だと
 考えられます)

被害者 つまり 裁判を起こすのは(原告になるのは) 

[管理組合][個々の組合員の全体(総体)][持分を持つ個々の組合員各々]

のうち どれなのか ? どれであっても 問題なく 可とされるのか

既判力 とか 当事者適格 とか 法的な言葉は抜きにして・・・

先に 追行されたものが 法的には 同一の訴えのなかで唯一有効 となると
いうことなのか?


そのあたりは 特に執行部としては知っておくべき知識でもあるのでしょうか・・・

争いごと とはいっても

『裁判上での追及までは必要ないのでは』という考えもあるでしょうし

権利意識が マスマス 強くなっている ? といわれる昨今

『私一人であっても 納得できるまで訴訟を追行します』という組合員がいること

も さほど珍しいことではないのかもしれません

 

 

理事長の不法行為に対しての損害賠償のことですが 区分所有者が請求すると

いうことが許されるかについて 区分所有者が単独で請求することはできないと

いう判決があります(東京地判平成17・6・8)

 

そもそも [管理組合]の権利義務というのは どのようなものなのでしょう ?

規約に違反している区分所有者が与えた損害が発生したとき その損害賠償を

受け取る権利を持つのは [管理組合]という団体でしょうか それとも その

違反者以外の[個々の組合員] あるいは [組合員全体]なのでしょうか ?

規約というのは管理組合内部の規範であり それを守る義務は管理組合に対する

義務であると解されるので その義務に対応する権利というものは法人格のない

社団としての管理組合が持つことになるのだ ということなのでしょうか ?


持分を持つ共有者の団体でもあるのがマンション管理組合なので 一般的な団体

というものとは法的に扱いが異なる点があって当然であるとも解されるのであって 

大元の持分所有者である区分所有者自体が権利者なのだから 管理組合そのもの

の権利というもの以前に 区分所有者が 責任追及者で判決を受け取る者なのだ

という考え方もあるでしょうし・・・

 

というようなことが 問題になるのですが 理論は一義的に明確とはいえないよう

で 裁判においても サマザマです(端的言うと [管理組合]を前面に登場さ

せる か [区分所有者全体]を あるいは [個々の管理組合員]を 権利者

として 訴訟追行をも許すか

 

ということあたりのことですが

不法行為についての損害賠償請求 とか 不当利得返還請求については 管理者

(理事長)の権限を明確にしています

  (権限)
  第二十六条 
  2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条
  において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共
  用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領について
  も、同様とする。
 
  (成立等)
  第四十七条 
  6 管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二
  十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並
  びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領に
  ついても、同様とする。
 
 
 
 
 
権利 ということが問題になる 反面
責任 のことも 
同様に問題になります
 
工作物責任(民法717)では 共用部分に起因した損害のことでは[管理組合]が責任を
負担するとの判例(漏水事故について 管理組合が水道管の占有者であるからとして東京
地判平成23・5・24)があったり
管理組合で管理すべき共用部分が原因となって個々の区分所有者に損害があった場合 最終
的には全区分所有者でその持分に応じてとなるとしても 先ずは管理組合は管理規約に基づ
いて あるいは工作物の不法行為責任を免れない との判例(福岡高裁平成12・12・27)
があったり
 
債務不履行責任では マンションの共用部分の修繕・保全を怠っていたために発生した専有部
への漏水による被害について[管理組合]への債務不履行責任追及が認められていたりしてい
ます(東京
地判平成22・2・12)
 
ということで [管理組合]への追及です
ゴミ置き場などへの不法占拠を是正することを怠ったことの追及を[管理組合]に為したこと
では マンションの共用部分の維持管理が管理組合の管理業務であったとしても その責務は
区分所有者全体に対して負うのであって 個々の区分所有者との関係においてその義務を負う
趣旨とは解されないので不法行為を構成しない とされた判例(東京地判平成21・1・28)
があったりし そこにおいては[管理組合]が責任の主体ではないとされています
 
 
 
 
では 関連して
区分所有者の責任は 
というと
 
(共用部分の負担及び利益収取)
第十九条 
各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部
分から生ずる利益を収取する。
 
とされているので [管理組合] が 工作物責任・債務不履行責任などの責任を負担する場合
には 区分所有者にも 持分に応じて負担が生じます

また 管理者の行為については
(区分所有者の責任等)
第二十九条 
管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに
任ずべき割合は、第十四条に定める割合と同一の割合とする。ただし、規約で建物並びにそ
の敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割
合による。
 <管理組合法人>
(区分所有者の責任)
第五十三条 
管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第
十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第二十九条
第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。
 
各区分所有者の負担の割合は 規約に別段の定めがあるのなら 規約の定めに従うことになる
 
となっています
 
 
 
マンションでお暮らしの方などには 参考になることかもしれません
 
受験者の方にとっても 参考になる知識だと 思われます
(一義的な解釈がなされない範囲のこととしても 適切か不適切か という問い方での
 出題などは考えられることでしょう)