昨日の 冬の東京で
目当ての研修会場まであと500mあたりの大通りを跨ぐ歩道橋
階段の途中に 落ち葉を敷いて 一人 老女が座っていた
集合時刻も迫っていたこともあり 急ぎ足だった私は 呼び止められたことを無視してその場を立ち去ろうとした
『・・百円 もらえない?・・』
という声にも 無視を続けたが
『・・できれば 二百・・円・・』と さも言いずらそうにしている気配に思わず足を止めてしまい
“・・まあ いろいろあるんだろうけど なんとか がんばってよ・・”
と 二百円を彼女に手渡し 私は立ち去った
そのことが 彼女の人生にとってはなんら意味のない乏しい施しにすぎなかったであろうことは分かっていながら 自分のその行為のせめて一割くらいは無意味ともいえないか などと自分を収めつつ
≪彼女の過去を引っ剥がしてやりたいものだ≫などと 涙をこらえながら 思ったりもしたのだった
こんなふうに あの出来事がメロドラマになってしまっているとすると その理由は 昨年逝ってしまった母の面影の少しを彼女に
見たためかもしれない
昨日の 冬の東京での 話
母が逝って 一年と一〇日ほどが過ぎた
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