昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

運が悪いことから全てが始まった(31)大学時代(14)

2013-10-31 05:25:51 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 帰りももちろんタクシーだった。
 こんなでかい熊手を抱えて、奥さんでなくても電車で帰るなんてボクだって願い下げだと思っていた。
「藤原さんってけっこう遊び人ね?」
「酒井さんってにぎやかな方ね?」
 タクシーの中では奥さんから同居人のことについて話しかけられたが、何を話したかぜんぜん覚えていない。
 奥さんが抱きついてきた感触を何度も思い起こしていて、そんな野暮な同居人のことなどどうでもよかった。
 
 むしろ、時々でかい熊手ががさついた感触で迫ってくる方が鬱陶しかった。
 

 その後、このことは誰にも知られなかった。
 誰も知らないということは、奥さんがばらしていないということだ。
 そのまま日にちが過ぎるにしたがって、ボクは深読みするようになった。
 ・・・あのことは奥さんの計画的隠密行動だったのでは? 偶然のように見せかけて、他のものが出払ったタイミングに合わせてボクに照準を合わせて来たのだ・・・
 あのときの奥さんが抱きついてきたときの感触をまた思い出していた。
 
 日を追って真実を知りたいという思いが昂ってきた。
 誰かにしゃべってしまいたいという思いに駆られた。
 夕食前、何も手がつかずそんな気持ちに浸っているとき、ドアが叩かれ藤原がのぞいた。
「例の連中が來るんだ。つきあってくれないか? 8時ごろ・・・」
 麻雀の誘いだ。
「うん、分かった」と無意識で返事すると同時に言っていた。
「ちょっと、聞いてもらいたいんだけど・・・」

 ─続く─

 NHKテレビのあさイチをいつものように見ていた。
「有働さんって、髪型は今日のようにつまんでいる方がいいわね。横にばさっと拡がった髪型は山口もえさんならいいんだけど・・・」
 家内が言った。
 なるほど、シャープな有働さんにはたしかにいいかも・・・。
 ぼくはテーマの<遺影写真>に合せて、コメントを早速NHKに送った。
 
 採用されなかったけれど、翌日も彼女はすっきりした髪型で登場した。
 そんなわけないよな。考えすぎか・・・。


  


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