昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

運が悪いことから全てが始まった(77)貿易会社(35)

2014-01-03 05:46:11 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 この会社に入って3年目、振り返ってみればいろいろと動き回っていたかもしれないが、先輩たちに振り回されていただけで仕事らしい仕事をしたという実感はない。
 今は次の仕事の担当待ちで、忙しそうに立ち働く周囲のひとたちをぼんやりと眺めている。
 公園の陽だまりに佇んでいるように・・・。
 

 そんな時、藤原の彼女に会い、今井女史の結婚のうわさが入り、永野がジュリー・ロンドンのレコードを借してくれたりして、仕事だけではない人生の別のステップを意識するようになった。
 そしてたたみかけるようにボクの人生を左右する事件が起きた。
 というより、ボクの中で何かが弾けた。
 
 1か月ほど前、機械第2課に新しく伊藤という女子社員が入ってきた。
 2課の課長は高木氏がココム事件で退社し、新たに専務が通産省から引っ張ってきた磯田機械部長が兼務していたが、そこにさらに岩田専務の紹介ということで入社してきたのだ。
 岩田専務が満鉄にいたころ縁があったのだと聞いている。
 その入社まもない伊藤が退社するというのだ。
 彼女に関してはほっぺたの赤い、明るい女の子という印象だけでボクにとって特別関心を引く存在ではなかった。
 ところが、送別会で彼女が歌った<からたちの花>がボクの琴線に触れた。
 
 岩田専務の紹介によれば、彼女は中学生の時県代表として全国歌唱コンクールに出場した実績の持ち主だった。

 ─続く─


 
「何で、箱根駅伝はおばさんに人気があるんですかね? ウチの会社のおばさんにバカ受けなんですよ」
 新年に我が家にやってきた娘婿がテレビを見ながら言った。
 たしかにウチの家内も大好きだ。
「健気で一途なところがいいんだよ」
 
 ぼくは宮崎駿監督の好みだという女性を思い出しながら答えた。


 
 


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