今日も沿岸貿易の担当、物資部の池田のロシア語でまくしたてる電話の声が営業部を圧していた。
「おい、おい、声がでかい! そんなでかい声でなくても伝わるだろうが!」
佐賀が、彼にしては大きな声を張り上げたが、そんな日本語は次の瞬間、池田デブチカのロシア語に押しつぶされ消し飛んでいた。
浅井などは机の下にもぐって電話をかけていた。
池田は体形からデブチカなんて呼ばれていて、普段はニコニコと話を聞いてくれ、風船みたいに扱いやすい男なんだが、いったん仕事の話となると表情は一変する。
目が据わって口が尖がり、でかい声で反論する。
その声たるや、部屋の外の人まで相手にしているのではと思われるほどだ。
「また電話か・・・」
今度は日本語で対応している。
「売り込み先は、姿、形で売り込む魚屋ばかりとは限らんだろう!」
相手は、池田が今回ソ連と輸入契約した魚の売り込みに出かけた営業マンらしい。
日本では見慣れない深海の魚で、みんなが・・・こんな魚売れるの?・・・と言っていたやつだ。
沿岸貿易はバーターだから輸出した分だけ輸入しなければならないが、売るものはいくらでもあるが、買うものが少ないからこんな変なものを押し付けられる。
「お前、喰ってみたか? 鱈みたいな淡白な味で意外とうまいんだから! フライにすれば学校給食で売れるぜ。かまぼこ加工業者でもいいし、一挙に捌けるじゃないか!」
・・・なるほど!・・・
部屋中のみんなが納得させられちゃった。
ソ連からの魚といえば、何といっても鮭だが、敵もさるもの、数量割り当てで希望するほど売ってくれない。
だから、これはお歳暮として、M造船など重要なお得意さまに配ることにしている。
─続く─
「おい、おい、声がでかい! そんなでかい声でなくても伝わるだろうが!」
佐賀が、彼にしては大きな声を張り上げたが、そんな日本語は次の瞬間、池田デブチカのロシア語に押しつぶされ消し飛んでいた。
浅井などは机の下にもぐって電話をかけていた。
池田は体形からデブチカなんて呼ばれていて、普段はニコニコと話を聞いてくれ、風船みたいに扱いやすい男なんだが、いったん仕事の話となると表情は一変する。
目が据わって口が尖がり、でかい声で反論する。
その声たるや、部屋の外の人まで相手にしているのではと思われるほどだ。
「また電話か・・・」
今度は日本語で対応している。
「売り込み先は、姿、形で売り込む魚屋ばかりとは限らんだろう!」
相手は、池田が今回ソ連と輸入契約した魚の売り込みに出かけた営業マンらしい。
日本では見慣れない深海の魚で、みんなが・・・こんな魚売れるの?・・・と言っていたやつだ。
沿岸貿易はバーターだから輸出した分だけ輸入しなければならないが、売るものはいくらでもあるが、買うものが少ないからこんな変なものを押し付けられる。
「お前、喰ってみたか? 鱈みたいな淡白な味で意外とうまいんだから! フライにすれば学校給食で売れるぜ。かまぼこ加工業者でもいいし、一挙に捌けるじゃないか!」
・・・なるほど!・・・
部屋中のみんなが納得させられちゃった。
ソ連からの魚といえば、何といっても鮭だが、敵もさるもの、数量割り当てで希望するほど売ってくれない。
だから、これはお歳暮として、M造船など重要なお得意さまに配ることにしている。
─続く─
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