昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(150)第18回読書ミーティング(1)石原慎太郎「天才」

2016-05-22 05:16:45 | 三鷹通信
 現役編集者が主催する第18回読書ミーティングが昨日、三鷹市市民協働センターで開かれた。 
 それなりに現代を表す特徴的な作品が揃った。
 手際よくまとめられた講師の内容に添って紹介する。

 講師推薦のベストセラーは、石原慎太郎「天才」
 
 石原慎太郎が、田中角栄に乗り移って「俺」の一人称で描く。
 高等小学校卒から総理大臣に上り詰め、「今太閤」と呼ばれた。戦後最高の支持率を得たが、最後はその金権体質を批判され退任。
 その後も派閥のキングメーカーとして、大平、鈴木、中曽根の総理大臣を誕生させた。後、ロッキード事件で逮捕。
 本書の後半はキングメーカーとしての地位を金丸、竹下に奪われていく過程の心境を述べたものである。
 稀代の政治家田中角栄といえば、類まれな権謀術数と人心掌握術に注目が集まるが、デリケートな一面もあり、浪花節と映画をこよなく愛する家族思いの人情家だった。
 それにしてもかつて反田中の急先鋒だった石原慎太郎が、今なぜ「田中角栄」に惹かれるのか。去年から始まった田中角栄本ブームの頂点にある。5月16日現在で50万部突破。おそらく今年のベストセラーとして100万部を超えるのではなかろうか。
       
 *ナイーブでストイック、何か覚ったような心情と、現実をしたたかに生き抜くエネルギー
 *日本改造列島論は戦後日本の社会基盤整備に正負両面にわたる大きな影響を残した。
 *日本外交では周恩来、毛沢東にも一目置かれる人情に溢れた人たらし。
  (大蔵大臣に44歳で就任。「自分は高等小学校卒業だが、キミたちは日本中の秀才の代表であり、財務、金融の専門家だ。だが、私はトゲの多い門松をくぐってきていささか仕事のコツを知っている。すべての責任は俺が負うから上司を飛び越えても何でも言ってくれ」という挨拶が有名)
 *家族も愛人(佐藤昭、辻和子)も、我が子も愛人の子も大切にした。裏切り者の竹下登でさえ許した。反金権、反田中の急先鋒だった石原慎太郎を「いいんだよ、政治家だから」と許した。
 *脱アメリカを目指したが故に、罠に嵌められたロッキード事件。
  (総理になって初の総選挙で、当時の法律にのっとって金を集めた。100億円の中の5億円がどこから来たのかわからない。それをロッキード社からもらったとされた。)
 *「天才}とは、仕事の結果を出して愛される人、田中角栄のような人のことを言うのだ。


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