「はあ?」
思わず腕時計を見た。まだ12時まで30分ある。
「仕事あるの? まだないんだろう? 弁当なんか持ってきていないんだろう?」
やくざみたいなおっさんは机の上の書類をさっさと片隅に寄せ、立ち上がりながら言った。
「お嬢さん、お借りしますぜ・・・」
永野に断りを入れるため3階の総務部から2階の機械部に下りたら、背後からおっさんが言った。
永野はボクを睨んだが、こっちのおっさんの威力に負けて、ボクはおっさんに従った。
「この近くに知り合いがロシアンレストランを開店したんだ。そこへ行こう」
外へ出ると、やくざのいかめしい顔がとつぜんふりそそいできた春の陽光に融かされたように崩れて、ふつうのおっさんの顔になり、笑顔になった。
表通りを2,3軒歩いたところを曲がると、横道の2軒目にレストランというより喫茶店のような小さな間口で、マトリョーシカという立て看板のある店に入った。
4.5人が座れるカウンターと。4人掛けのテーブルがひとつの小さな店だ。
奥の棚の上から、マトリョーシカのお人形たちに見つめられたが、客は誰もいなかった。
おっさんに従ってカウンターに座ると、食欲をそそるいい香りとともに、真っ赤なドレスの中年の太ったマダムが、薄暗い店内をぱっと明るく照らすように現れた。
「まあ、大崎さん! お客さま第一号! ありがとう!」
彼を包み込まんばかりに、プルプルする二の腕をさし出して嫣然と笑った。
・・・大崎っていうんだ、このおっさんは・・・
「今日開店だというから、ウチの新人を連れてきた」
大崎はあごで指し示してボクを紹介した。
「まあ、なかなかいい男じゃない。お名前は?」
「司秀三といいます。三日前に入社したばかりです」
「司? ずいぶん高貴な名前じゃん!」
大崎は改めてしげしげとボクの顔を眺めた。
大崎とも初対面の挨拶を交わしてなかった。
─続く─
こんな所にも日本テクノロジーが!
どんな形状の商品でも、しわひとつなく、きっちりと包装できるシュリンクパック技術。
専用のビニールフィルムで覆い、熱風をトルネード方式で四方から当てることで、しわもなく収縮させ、強く固定保持する包装技術だ。
思わず腕時計を見た。まだ12時まで30分ある。
「仕事あるの? まだないんだろう? 弁当なんか持ってきていないんだろう?」
やくざみたいなおっさんは机の上の書類をさっさと片隅に寄せ、立ち上がりながら言った。
「お嬢さん、お借りしますぜ・・・」
永野に断りを入れるため3階の総務部から2階の機械部に下りたら、背後からおっさんが言った。
永野はボクを睨んだが、こっちのおっさんの威力に負けて、ボクはおっさんに従った。
「この近くに知り合いがロシアンレストランを開店したんだ。そこへ行こう」
外へ出ると、やくざのいかめしい顔がとつぜんふりそそいできた春の陽光に融かされたように崩れて、ふつうのおっさんの顔になり、笑顔になった。
表通りを2,3軒歩いたところを曲がると、横道の2軒目にレストランというより喫茶店のような小さな間口で、マトリョーシカという立て看板のある店に入った。
4.5人が座れるカウンターと。4人掛けのテーブルがひとつの小さな店だ。
奥の棚の上から、マトリョーシカのお人形たちに見つめられたが、客は誰もいなかった。
おっさんに従ってカウンターに座ると、食欲をそそるいい香りとともに、真っ赤なドレスの中年の太ったマダムが、薄暗い店内をぱっと明るく照らすように現れた。
「まあ、大崎さん! お客さま第一号! ありがとう!」
彼を包み込まんばかりに、プルプルする二の腕をさし出して嫣然と笑った。
・・・大崎っていうんだ、このおっさんは・・・
「今日開店だというから、ウチの新人を連れてきた」
大崎はあごで指し示してボクを紹介した。
「まあ、なかなかいい男じゃない。お名前は?」
「司秀三といいます。三日前に入社したばかりです」
「司? ずいぶん高貴な名前じゃん!」
大崎は改めてしげしげとボクの顔を眺めた。
大崎とも初対面の挨拶を交わしてなかった。
─続く─
こんな所にも日本テクノロジーが!
どんな形状の商品でも、しわひとつなく、きっちりと包装できるシュリンクパック技術。
専用のビニールフィルムで覆い、熱風をトルネード方式で四方から当てることで、しわもなく収縮させ、強く固定保持する包装技術だ。
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