昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

なるほど!と思う日々(208)政治(4)

2011-07-06 05:25:55 | なるほどと思う日々
 問題発言で辞任を否定していた松本龍復興相が、翌日いとも簡単に辞表を提出した。
 <なりゆきにまかせて決然と生きる>菅首相の任命した人物にしてはいかにも<いさぎよい>
 一度打診されて断った経緯もあったと聞いている。
 彼自身、心底から引き受けた復興相ではなかったのだろう。

 風体から判断するのはどうかとも思うが、任命されたとき「なぜ彼が?」というのが正直な感想だった。
 なんか地味でいつも下を向いていて覇気が感じられない。
 復興大臣には、例えば田中角栄のような、明るく、前向きで部下を叱咤してブルドーザーのように課題を処理するイメージのある人物を、と思っていたから。

 ところが復興相として被災地の知事たちに臨んだ彼の言動は、予想を裏切るものだった。
「知恵を出したやつは助けるが、出さないやつは助けないぞ!」
「(構想について)県がコンセンサスを得ろよ。そうしないと、われわれは何もしないぞ!」
 なんと、その上から目線の、傲慢な物言いは田中角栄に似ているではないか。
 ・・・しかし、どこか違う・・・

 渡邊恒雄氏が元東大総長茅誠司氏とともに田中角栄氏と鼎談した記録があるので参考にしてみよう。
 話題は彼の<日本列島改造論>に基づく、筑波研究学園都市計画についてだ。

「東京教育大学を移転し、学者をたくさん招聘し、大学園都市をつくろうとしたんだな。
 ところが当の教育大の学者は非常に怒るわけだ。・・・筑波なんかに行ったら情報が少ない。出版社とのつき合いもなくなる。メシの食い上げだ・・・なんて。
 ちょうどそのころNTVの特別番組で、僕と茅誠司さんと角さんとで、鼎談をやったことがあるんだ。・・・茅さんは元東大総長として大学側の立場からいろいろものを言おうとするわけだ。
 ところが一時間のうち、茅さんの発言は3分ぐらいなんだ。何か言おうとしても、角さんが延々とまくしたてる。・・・だけどなんとか僕が、『大学教授の大部分が行きたがらない現実にどう対処するんですか』と質問する。そしたら
『おい、筑波に行って三階建てをつくると富士山が見えるんだ。それで教授には300坪、助教授には200坪、講師には100坪と、みんな土地をくれてやる。そうすれば大学教授だって喜んで行くはずだ』と言うんだ。僕は驚いたよ。土建屋的発想で、教授、助教授、講師とランク付けするわけなんだからさ」


 収録後、茅氏をして、「いやぁ、あの人にかかったらどうしようもありませんね」と言わせた田中角栄氏の上から目線の傲岸な物の言い方は、今回の松本氏の言い方に似ているではないか。

 しかし、田中角栄には自身の目標を達成するための独自の具体的な構想が描けていて、それを達成させようとする強い意志が漲っている。
 ところが松本龍にはそれが見えない。
 松本氏の周辺の人たちによれば、彼はむしろあの発言が意外なほど温厚な人だと言う。
 だとすれば、あの発言は異常なものであって、辞任は当然とも言える。

 後任の復興相は、いわゆる大物、仙谷由人氏、亀井静香氏などには断られたのだろう。
 予想した通り、復興担当の平野達夫内閣府副大臣に決まったようだ。
 菅首相は松本復興相の辞任に伴う記者会見も拒否、無言を貫いている。

 あくまでも菅家の家訓<なりゆきにまかせて決然と生きる>ということのようだ。
 しかし、これからのリーダーには<目標に向かって決然と生きる>であってほしいものだ。