歌番号 1087
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 与遠宇美天 和可々須以止者 多奈者多乃 奈美堂乃多麻乃 遠止也奈留良无
和歌 よをうみて わかかすいとは たなはたの なみたのたまの をとやなるらむ
読下 世をうみてわかかすいとはたなはたの涙の玉のをとやなるらん
解釈 この世を倦みている私が供える糸は、七夕の織姫のような、理不尽な定めに泣く涙の玉を紡ぐ緒になるのでしょうか。
歌番号 1088 拾遺抄記載
詞書 天禄四年五月廿一日、円融院のみかと、一品の宮にわたらせ給ひて、らんことらせ給ひけるまけわさを、七月七日にかの宮より内の大はん所にたてまつられける扇にはられて侍りけるうす物に、おりつけて侍りける
詠人 中務
原文 安満乃可者 /\部寸々之幾 多奈者多尓 安布幾乃可世遠 奈本也加左万之
和歌 あまのかは かはへすすしき たなはたに あふきのかせを なほやかさまし
読下 あまの河河辺すすしきたなはたに扇の風を猶やかさまし
解釈 天の川、秋になり川辺は涼しくなった、それでも、七夕では逢瀬の二人に扇の風を貸してあげましょうか。
歌番号 1089
詞書 天禄四年五月廿一日、円融院のみかと一品宮にわたらせ給ひて、らんことらせ給ひけるまけわさを、七月七日にかの宮より内の大はん所にたてまつられける扇にはられて侍りけるうす物に、おりつけて侍りける
詠人 中務
原文 安万乃可者 安布幾乃可世尓 幾利者礼天 曽良須美和多留 可左々幾乃者之
和歌 あまのかは あふきのかせに きりはれて そらすみわたる かささきのはし
読下 天の河扇の風にきりはれてそらすみわたる鵲のはし
解釈 天の川、扇の風で川霧は晴れて空は澄み渡った、その天の川に織姫が渡る掛かる鵲の橋が見えます。
注意 日本流の七夕は牽牛が天の川を舟や徒歩で渡りますが、中国流の七夕は天の川に掛かる鵲の翼の橋を織姫が渡ります。
歌番号 1090
詞書 おなし御時の御屏風、七月七日夜ことひく女あり
詠人 源したかふ
原文 己止乃祢者 奈曽也加比奈幾 多奈者多乃 安可奴和可礼遠 比幾之止女祢八
和歌 ことのねは なそやかひなき たなはたの あかぬわかれを ひきしとめねは
読下 ことのねはなそやかひなきたなはたのあかぬ別をひきしとめねは
解釈 琴の音は、どうして、甲斐が無いのでしょうか、七夕の年に一度の飽きることない逢瀬の別れを、その音色で引き留めるとこもしないので。
歌番号 1091
詞書 仁和の御屏風に、七月七日女の河あみたる所
詠人 平定文
原文 美川乃安也遠 於利多知天幾武 奴幾知良之 多奈者多川女尓 己呂毛加寸与八
和歌 みつのあやを おりたちてきむ ぬきちらし たなはたつめに ころもかすよは
読下 水のあやをおりたちてきむぬきちらしたなはたつめに衣かすよは
解釈 水の水紋の模様を織り裁って着たいものです、それを脱ぎ散らし、棚機つ女(織女)に衣を貸す夜は。
注意 牽牛は牛飼い、織女は機織りの労働者なので、立派な衣装を持っていないだろうとの、貴族の発想の歌です。
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