歌番号 1092
詞書 七月七日によみ侍りける
詠人 藤原義孝
原文 安幾可世与 多奈者多川女尓 己止々波无 以可奈留世尓可 安者无止寸良无
和歌 あきかせよ たなはたつめに こととはむ いかなるよにか あはむとすらむ
読下 秋風よたなはたつめに事とはんいかなる世にかあはんとすらん
解釈 秋風よ、棚機つ女(織女)に聞いてみたいものです、一体、どのような時になれば私は恋人と逢えばいいのでしょうか。
歌番号 1093
詞書 寂昭か、もろこしにまかりわたるとて、七月七日舟にのり侍りけるに、いひつかはしける
詠人 右衛門督公任
原文 安万乃可者 乃知乃遣不多尓 者留个幾遠 以川止毛之良奴 布奈天可那之奈
和歌 あまのかは のちのけふたに はるけきを いつともしらぬ ふなてかなしな
読下 天の河のちのけふたにはるけきをいつともしらぬふなてかなしな
解釈 天の川の明けた今日でも来年の牽牛織女の二人の逢瀬を思うと遥かな時と思うのに、次はいつに再会出来るかとも判らない、その貴方の唐への船出が辛いです。
歌番号 1094 拾遺抄記載
詞書 七夕後朝に、みつねかもとよりうたよみておこせて侍りける、返ことに
詠人 つらゆき
原文 安飛美寸天 比止日毛幾美尓 奈良八子八 多奈者多与利毛 和礼曽万左礼留
和歌 あひみすて ひとひもきみに ならはねは たなはたよりも われそまされる
読下 あひ見すてひとひも君にならはねはたなはたよりも我そまされる
解釈 一日も出会わないことが無い貴方と会わないことに馴れていないので、まるで、年に一度の逢瀬の七夕の二人より、私の貴方に出会えない悲しみの方が勝ります。
歌番号 1095
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 武徒万之幾 以毛世乃也万止 志良祢者也 者川安幾々利乃 多知部多川良无
和歌 むつましき いもせのやまと しらねはや はつあききりの たちへたつらむ
読下 むつましきいもせの山としらねはやはつ秋きりの立ちへたつらん
解釈 ここが仲が睦ましい夫婦の妹背山の地とは知らないので、初の秋霧が立って、妹山と背山との間を隠し仲を断ち切るのでしょう。
歌番号 1096
詞書 天暦の御屏風に
詠人 よみ人しらす
原文 毛之本也久 个武利尓奈留々 寸万乃安満八 安幾多知幾利毛 和可寸也安留良无
和歌 もしほやく けふりになるる すまのあまは あきたつきりも わかすやあるらむ
読下 もしほやく煙になるるすまのあまは秋立つ霧もわかすやあるらん
解釈 藻塩を焼く煙に馴れてしまった須磨の海人は、秋に立つ霧も煙か霧か見分けがつかないのだろうか。
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