歌番号 1112
詞書 右大将定国家の屏風に
詠人 みつね
原文 須美乃衛乃 万川遠安幾可世 布久可良尓 己恵宇知曽不留 於幾川之良奈美
和歌 すみのえの まつをあきかせ ふくからに こゑうちそふる おきつしらなみ
読下 住の江の松を秋風ふくからに声うちそふるおきつしら浪
解釈 住之江の松を秋風が吹くにつれて、その秋風の音に打ち寄せ添える沖からの白波よ。
歌番号 1113
詞書 題しらす
詠人 人まろ
原文 安幾可世乃 佐武久布久奈留 和可也止乃 安左知可毛止尓 比久良之毛奈久
和歌 あきかせの さむくふくなる わかやとの あさちかもとに ひくらしもなく
読下 秋風のさむくふくなるわかやとのあさちかもとにひくらしもなく
解釈 音を立て秋風が寒く吹く中で、私の屋敷の浅茅の側でヒグラシも啼いている。
歌番号 1114
詞書 題しらす
詠人 人まろ
原文 安幾可世之 比々止尓不計者 王加也止能 遠可乃己乃者々 恵呂川幾尓个利
和歌 あきかせし ひことにふけは わかやとの をかのこのはは いろつきにけり
読下 あき風し日ことにふけはわかやとのをかのこのはは色つきにけり
解釈 秋風が日ごとに吹けば、私の屋敷から見える丘の木の葉は色付いて来た。
歌番号 1115
詞書 題しらす
詠人 人まろ
原文 安幾々里乃 堂奈比久遠乃々 者幾乃者奈 以満也知留良无 以万多安可奈久尓
和歌 あききりの たなひくをのの はきのはな いまやちるらむ いまたあかなくに
読下 秋きりのたなひくをのの萩の花今やちるらんいまたあかなくに
解釈 秋霧の棚引く小野の萩の花、今にも散るようだ、まだ、赤く紅葉もしていないのに。
歌番号 1116
詞書 ちかとなりなる所に方たかへにわたりて、やとれりとききてあるほとに、事にふれて見きくに、歌よむへき人なりとききて、これかうたよまんさまいかてよく見むとおもへとも、いとも心にしあらねは、ふかくもおもはす、すすみてもいはぬほとに、かれも又こころ見むと思ひけれは、はきのはのもみちたるにつけて、うたをなむおこせたる
詠人 女
原文 安幾者幾乃 志多波尓川个天 女尓知可久 与曽奈留比止乃 己々呂遠曽美留
和歌 あきはきの したはにつけて めにちかく よそなるひとの こころをそみる
読下 秋はきのしたはにつけてめにちかくよそなる人の心をそみる
解釈 秋萩の色付く下葉の様に関わって、気にしながらも素知らぬふりをする近所に住んでいる人の心の内を覗い知りました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます