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竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
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万葉集 集歌3836から集歌3840まで

2022年11月15日 | 新訓 万葉集
謗倭人謌一首
標訓 倭人(やわひと)を謗(そし)れる謌一首
集歌3836 奈良山乃 兒手柏之 兩面尓 左毛右毛 倭人之友
訓読 奈良山の児手柏(てかしわ)し両面(ふたおも)にかにもかくにも倭人(やわひと)の友(とも)
私訳 奈良山の児手柏の葉が両面あるように、ああも云い、こうも云う心根の定まらない貴方よ。
左注 右謌一首、博士消奈行文大夫作之
注訓 右の謌一首は、博士(はかせ)消奈(せなの)行文(ぎょうもんの)大夫(まえつきみ)、之を作れり

集歌3837 久堅之 雨毛落奴可 蓮荷尓 渟在水乃 玉似将有見
訓読 ひさかたの雨も降らぬか蓮葉(はちすは)に渟(とど)まる水の玉に似る見む
私訳 遥か彼方から雨も降って来ないだろうか。蓮の葉に留まる水の玉に似たものを見たいものです。
左注 右謌一首、傳云有右兵衛。(姓名未詳) 多能謌作之藝也。于時、府家備設酒食、饗宴府官人等。於是饌食、盛之皆用荷葉。諸人酒酣、謌舞駱驛。乃誘兵衛云開其荷葉而作。此謌者、登時應聲作斯謌也
注訓 右の謌一首は、傳へて云はく「右兵衛(うひょうえ)なるものあり(姓名は未だ詳(つばび)らならず)。 多く謌を作る藝(わざ)を能(よ)くす。時に、府家(ふか)に酒食(しゅし)を備へ設け、府(つかさ)の官人等(みやひとら)を饗宴(あへ)す。是に饌食(せんし)は、盛るに皆荷葉(はちすは)を用(もち)ちてす。諸人(もろびと)の酒(さけ)酣(たけなは)に、謌舞(かぶ)駱驛(らくえき)せり。乃ち兵衛なるものを誘ひて云はく『其の荷葉を開きて作れ』といへば、此の謌は、登時(すなはち)聲に應(こた)へて作れるこの謌なり」といへり。
注訳 右の歌一首は、伝えて云うには「右の兵衛府にある人物がいた。姓名は未だに詳しくは判らない。多くに歌を作る才能に溢れていた。ある時、兵衛府の役所で酒食を用意して、兵衛府の役人達を集め宴会したことがあった。その食べ物は盛り付けるに全て蓮の葉を使用した。集まった人々は酒宴の盛りに、次ぎ次ぎと歌い踊った。その時、右の兵衛府のある人物を誘って云うには『その荷葉を開いて歌を作れ』と云うので、この歌は、すぐにその声に応えて作ったと云う歌」と云う。

無心所著謌二首
標訓 心の著(つ)く所無き謌二首
集歌3838 吾妹兒之 額尓生 雙六乃 事負乃牛之 倉上之瘡
訓読 我妹子し額(ひたひ)に生(お)ふる双六の牡(ことひの)牛(うし)し鞍(くら)上(へ)し瘡(かさ)
私訳 私の愛しい妻の額の二つの、双六の勝負に負けた形の牛の、牡牛の倉の、鞍の上の瘡。

集歌3839 吾兄子之 犢鼻尓為流 都夫礼石之 吉野乃山尓 氷魚曽懸有 (懸有、反云佐家礼流)
訓読 我が背子し犢鼻(たふさき)にする円石(つぶれし)し吉野の山に氷魚(ひを)ぞ下がれる
(懸有、反(はん)して「さかれる」と云ふ )
私訳 私の愛しい夫がフンドシにする丸い石の、礫岩の吉野の山に氷雨、その氷魚がぶら下がる。
左注 右謌者、舎人親王令侍座曰、或有作無所由之謌人者、賜以錢帛。于時、大舎人安倍朝臣子祖父乃作斯謌獻上。登時以所募物、錢二千文給之也
注訓 右の謌は、舎人親王侍座(じざ)に令(おほ)せて曰はく「或は由(よ)る所無き謌を作る人あらば、賜ふに錢帛(せんはく)を以ちてせむ」といへり。時に、大舎人安倍朝臣子祖父(こおほぢ)、乃(すなは)ちこの謌を作りて獻上れり。登時(すなはち)以所(ゆえに)募(つの)れる物、錢二千文を給ひき
注訳 右の歌は、舎人親王が侍者に命じられて云うには「もし、意味が有りそうで無い歌を作る者がいたら、褒美を授けるのに銭や帛をやろう」と云われた。その時に、大舎人の安倍朝臣子祖父が、すぐにこの歌を作って献上した。そこで、その褒賞の品物として、銭二千文を授け為された。

池田朝臣、嗤大神朝臣奥守謌一首 (池田朝臣名忘失也)
標訓 池田朝臣の、大神朝臣奥守を嗤ひたる謌一首 (池田朝臣の名を忘れ失すなり)
集歌3840 寺々之 女餓鬼申久 大神乃 男餓鬼被給而 其子将播
表歌
訓読 寺々の女餓鬼(めがき)申(もを)さく大神(おほみわ)の男餓鬼(をがき)給(たは)りてその子(こ)を播(ま)かむ
私訳 寺々で淫欲や嫉妬深い女たちが申すことには、大神寺にある男餓鬼の仏像を頂いて、その係累の仏像を世の中に広めましょう。
裏歌
訓読 寺々の女餓鬼(めがき)申(もを)さく大神(おほみわ)の男餓鬼(をがき)戯(たは)りてその子(こ)を播(ま)かむ
私訳 あちらこちらの寺々の淫欲や嫉妬深い女たちが申すことには、大神氏の女に餓えた男餓鬼は女に戯れて、女に子を孕ませた。
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