ゴダールの記憶 Ⅱ
W君とのくだらない諍いで
「気狂いピエロ」を知った中学3年生の自分。
いきなりだけど、話は現在に飛ぶ。
2022年9月17日。
つまり本日、ゴダールに触れたのです。直近の記憶。
墨田区に新しくオープンした
「ストレンジャー」という名の映画館の
こけら落としがゴダール特集だったという。
「パッション」「右側に気をつけろ」など
80〜90年代の監督作の上映という
なかなか攻めたプログラムで、
もちろんゴダールの訃報とは無関係でまったくの偶然。
かくいう自分もネットで前売りチケットを
買った日の夕方に訃報を聞いたという顛末。
普段からゴダールゴダール
とか言っておきながら未見の作品があったわけで、
それが「JLG/自画像」と「フォーエヴァー・モーツァルト」。
シネフィルって何でも見ているようで、
実は大して見ていないのです。
という自虐ネタは置いておいて、2作ともやはり素晴らしい。
やさしい光が差し込むなか、
いたって素直に自身をスケッチしていく
語り口が心地良い「JLG/自画像」。
過去の書物や映画から引用される言葉が流れ、
けっこう楽しそうに湖畔を歩くゴダール。
こんなに明るい御大の姿は珍しい。テニスとかしてるし。
苦悩に満ちた映画をつくるのに疲れていたのだろうかと
想像する95年作。
反面、いたって過激で残酷なのが、
「フォーエヴァー・モーツアルト」だ。
映画づくりのために、ボスニアにクルマで向かう
芸術家一家が遭遇する紛争と殺戮。
そして映画をつくる苦悩と悦びが散りばめられていて、
これまた傑作だと思い知らされた次第。
ベランジュール・アローが
カメラの前で執拗に「ウイ」と言わされる場面など、
女優を苛めて何か崇高なものを引き出そうとする魂胆が
いかにもゴダールらしい(褒めてません)と思わされる96年作。
このあとゴダールは、深淵かつ難解きわまる
「映画史」のプロジェクトに埋没していくわけで、
ある意味、ファンが喜ぶゴダール節のような語り口の作品は
これが最後なのかも、と思ったりするのです。
ゴダールの記憶 Ⅱ おわり
Ⅲに続きます。おそらく、たぶん。
ものすごく近未来なSF映画に見えたと思う。
愛というものを知るアンナ・カリーナの
美しさといったら、ない。
この映画を撮りおわってから、
ゴダールとカリーナは結婚したらしい。
さぞかしラブラブな感じが出ているのだろう。