沖田修一監督「さかなのこ」を見る。
さかなクンがさかなクンになるまでの
ライフストーリーをのん主演で描く。
さかなクンは好きでも嫌いでもないが、
この映画は好きだ。だからそのうち
さかなクンのことも好きになるんだろう、と思ったり。
幼い頃から魚が好きで、
その思いをずっと忘れず大事にして、
社会にうまく適応できない困難さを抱えながらも、
ついには本物の「さかな博士」になる。
実話ではあるけれど、かぎりなくおとぎ話に近く、
主役を演じられるのは、のん以外いないだろうと思うぐらい
はまった演技と佇まいで、彼女がいるからこそ
本作の成功があると思う。
のん演じる高校生が、埠頭で磯村勇斗ら演じるツッパリたちに
いちゃもんをつけられるも、その天衣無縫ぶりで
不良どもを圧倒し、癒やしていく。
このシークエンスはけっこう長くてダラダラしているのだけど、
なんという心地良さだろう。緊張とは無縁の
ただゆるくて穏やかで、自然と笑顔になってしまう場面。
のんの母親(井川遥)も決して幸せな人生を
送っているわけではないことを暗示させるし、
自宅のアパートに転がり込んでくる
シングルマザーの友人(夏帆)の悲哀もうっすらと漂ってきて、
能天気なこの映画に、いい感じのスパイスが効いている。
沖田監督の映画はどれも心優しい。
本作はもとより、傑作「横道世之介」や
「キツツキと雨」「子供はわかってあげない」など、
見るひとのやさぐれた心を穏やかにしてくれる
マジックのようなものがあるのです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます