スティーブン・スピルバーグ監督
「フェイブルマンズ」を見る。
スピルバーグがこれだけ個人的な映画を撮るとは。
もう76歳だからなあ、スピルバーグ。
人生を振り返りたくなったんだろうか。
とまあ、さぞかしノスタルジックな
感動作だと決めつけていたら、
かなり歯ごたえのある映画でびっくり仰天。
家族の映画であり、映画の映画でもある。
そして、映写機から放たれる光で満たされた映画であり、
逆光が大好きなスピルバーグの本領発揮ともいえる。
「地上最大のショウ」の列車転覆シーンを見て、
映画の魅力に取り憑かれたサミー少年は、
8ミリ映画を撮り始め、撮影と演出次第で
あらゆるものが表現できることを会得していく。
映画は観客の心をつかむが、
ときにはあらぬ方向に誘導することもある。
本作は、映画がそもそも持つ功罪について語っていく。
最愛の母親がクルマのヘッドライトに照らされて、
踊る場面の美しさが映し出されるのも映画であり、
その母親が父親以外の男と繫がっていたことがわかるのも、
主人公が撮ったフィルムの中なのだ。
なんでも写してしまう映画の残酷さも示される。
オタクでひ弱な主人公が、卒業パーティーで
スクールカーストでいちばん上にいる
クラスメートを主役にした映画を上映するクライマックス。
どんなにいけ好かない男でも、
ヒーローのように写るのが映画であり、
その姿を見たクラスメートが、
本当の自分ではないと泣く場面が悲痛きわまりない。
このシークエンス、
「桐島、部活やめるってよ」に
そっくりなのだけど、スピルバーグ見てるんじゃないかな。
あるいは朝井リョウの原作を読んでいるのかも。
そういう意味で本作は、「桐島」、そして
「少女は卒業しない」の3本立てで見るのが正しい。
閑話休題。
シネフィルモードが炸裂してすみません。
ともあれラスト。
キスマークをつけた晩年のジョン・フォードが
主人公に映画の極意を伝える場面。
あれは実話なのかどうかはともかく、
そうか、映画ってそういうことなんだ、と
スピルバーグの目を通して教えられた気がしたのです。
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