旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

オペラ『ラ・ボエーム』の後始末

2014-08-01 14:39:43 | 文化(音楽、絵画、映画)


 すでに書いてきたように、娘の制作したオペラ『ラ・ボエーム』は成功裡に終わった。みんな喜んでくれたようでホッとしている。

           
    

 しかしこれも書いてきたように、その準備過程の想像を絶する苦労も見てきた。中でも大道具・小道具の手作りや、舞台づくりのためのモノ集めには驚いた。
 観劇してくれた方には見ての通り、貧しいボヘミヤンたちが住むパリ場末の屋根裏の部屋は、塵あくたの山である。よくもこんなに汚い舞台が作れたものだと思ったほどだ。そしてその中には、はわが家から持ち出したものが多い。
 娘に「お父さん捨てる本ない?」と言われて、予てから処分を考えて捨てきれなかった30冊ばかりを渡した。それら酒の本、旅の本、経済学書などは、あるいは本箱に並べられ、あるいは束ねられて舞台に転がっていた。哲学者が最初に現れるとき、「今日も売れなかった」と下げて帰るのもその本だし、ミミが死ぬ前に寝る座椅子を支える本束もそれだ。
 ミミの死ぬ前といえば、彼女に掛けられた毛布は10年か15年か前まで私が使っていたものだ。娘はその毛布を、舞台の雰囲気に合うように絵具などで汚しながら、「こんな汚い毛布を着せられてミミはかわいそう…」と涙を流していた。
 舞台の左下隅(下の写真)を見てほしい。そこにあるゴジラやアンギラス(?)のおもちゃは40数年前に私が子供に買ってあげたものだ。どこから見つけ出したのか、ボヘミアンたちがジャレるおもちゃになっていた。

         
     左下隅拡大図

 そしてこれら舞台装置のすべては、終了後2トントラックに乗せられて夢の島に運ばれ、お金を払って捨てられた。オペラの翌日、出演者のO氏と舞台監督の二人が、炎天下でその作業をしているのを見て涙が出た。


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