旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

威厳に満ちたハイデルベルク

2007-12-28 16:30:13 | 

 

 このドイツ旅行の最後の訪問地はハイデルベルク。帰国の前日、友人夫妻と四人で、このドイツ最古の大学都市を訪ねた。そして、その落ち着いた、威厳に満ちた街を歩いて、ドイツ国家の高い品格に触れた感じがした。最後に訪れるに最もふさわしい町といえよう。
 
名だたる町の配置は、必ず美しい川を挟んで街がつくられ、それをまた美しい橋が結んで絶妙なバランスを構成している。ドナウ川を挟むハンガリーのブダペスト、モルダウ川にまたがるチェコのプラハは、いずれも川を隔てて王宮の丘と旧市街が拡がり、それを、前者はくさり橋、後者はカレル橋という有名な橋が結んでいる。
 
ハイデルベルクもネッカー川にまたがり、それをアルテ橋という文字通り「古い橋」がつないでいる。立派な橋門を持ち、十個近いアーチ型の橋げたが並ぶアルテ橋は、歴史を感じさせるとともに、ネッカー川に映す影が両岸の街と背後の山の緑と調和して気品がある。街に入りまず目に付く圧倒的な観光スポットだ。
 
ところが、それにも勝る観光的建造物が左岸の山の中腹にあるハイデルベルク城だ。フランスとの戦争でルイ十四世に二度にわたり徹底的な破壊を受けて、いまや廃墟となっているこの城は、むしろ廃墟であるがゆえに神々しい威厳をたたえているとも言えるようだ。これほど“静寂な威厳”を感じたものも珍しい。見た瞬間、後ずさりしたくなるような圧力があった。
 
ケーブルカーで上り、城から美しい市街やアルテ橋を眺め、城の中も見学した。びっくりしたのは城の地下に巨大な樽が据え付けられており、それは当時税金として取り立てたブドウを、ワインとして蓄えたものと言う。「決して良質のワインではなかったであろう」と解説者は言っていたが・・・。さすがにブドウの国の税金はブドウで払うのだ。
 
城壁から川向こうの山の中腹を見ると、一筋の道が通っている。それが、かの「哲学者の道」だ。どうしてもその道にだけは立ってみたい、と向かう。(続きは次回)
                     


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