桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

荒井政男さん

2013-06-27 | Weblog

東京拘置所内で出会った人に、荒井政男さんがいた。

三崎事件と呼ばれる事件で冤罪に巻き込まれたと言っていて、2階の荒井さんと3階にいた俺は、時々、手紙のやり取りをしていた。事件内容も聞かされたが、犯人は2階の犯行現場から1階まで、駆け降りたらしいが、荒井さんは足が悪くて片方の足を引きずるように歩いていた。「この足では駆け降りられない」と言っていたが、生き残った被害者の高校生の息子が「この人だ」と、証言したことなどで有罪になり、死刑囚として東京拘置所にいたが、お気の毒に2008年に病死した。獄死させられてしまった。

昨日、法廷前に弁護士控室に入ると、氷見事件の支援している山際監督がいた。「今日は何ですか?」と聞くと「三崎事件の再審で、良い鑑定結果が出た」と教えてくれた。

荒井さんの車のトランクにあった大工道具袋に付着した血液は「被害者の物」として有罪の根拠になったが、被害者家系の人の協力を得て、「ミトコンドリア方式のDEA鑑定」をしたところ、被害者の血液ではないことが判ったのだと言う。

娘さんが再審を引き継いだそうだが、今日の新聞にも、この鑑定のことが記事になっていた。

良かったねえ、と言っても、もう荒井さんには、この喜びが伝わらない。

無実の人が冤罪に囚われたまま塀の中で死ぬことほど、悔しいことはない。今、名張事件の奥西さんも厳しい状況であることを思うと、この悔しさのために俺は闘うのだと、感じるものがある。


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