桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

兄弟

2010-09-20 | Weblog
俺には、姉、兄、妹がいるが、こんな立場になったせいで、長い獄中生活では、ほとんど面会などの接触が無くなって過ごしたせいか、兄弟がいると思えないでいる。
昨日は、久しぶりに連れ合いと兄夫婦を尋ねたが、笑い話のような兄夫婦の話を聞いて帰って来た。
色々なエピソードがあり、公開は憚られるモノもあるが、貯金通帳の話には笑えた。
兄嫁は、結婚したことで兄の経済も一緒に管理したいと「貯金通帳を出して下さい」と言ったらしい。
通帳には、4ケタの金額が記されてあり、「一千万円台かぁ、男独り、これまで生きて来たわりには少ないかな」と思ったが、すぐに「あれ?」と感じたとか。そして、良く見たらば、たったの1485円!
「ビックラこいた!」らしい。
俺は、すぐに「俺にすれば、兄貴が貯金通帳を持っていたことの方が驚きだよ」と笑ったが、しっかり者の兄嫁に支えられ、放蕩生活わ重ねて来た兄も、やっと安定した生活になったのを知った。
「墓を、何とかするときは、俺も金は出すから」と、今までの兄貴には絶対に出ない言葉を、半ば信じられない思いで聞きながら、安心して帰って来た。