スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

叡王戦&思惟作用

2020-07-27 19:00:23 | 将棋
 23日に指された第5期叡王戦七番勝負第五局。持ち時間は3時間。
 永瀬拓矢叡王の先手で相掛かりから後手の豊島将之竜王・名人が横歩を取る展開。これを機に一気に激しくなりました。分かれは後手がよかったと思うのですが,勝機を見出せないまま受けに回っているうちに混沌としてきました。
                                        
 後手が2二の銀を上がった局面。この手も必要であったかどうかは微妙で,☖2八成桂から攻め合いを目指すのも有力だったと思います。ただ,後手の指し方からすると受けきるという方針であったのでしょう。
 先手からはいくつかの有力な筋がみえます。まず☗7一金と打てば☖8二飛でしょうから,そこで☗6一金と寄る順。ただ,一段目に金を打つのはあまり筋がよい手とされていません。
 ☗9一桂成も有力で,☖同飛は☗8二角ないしは銀があります。ただこれは銀を上がったのを生かして☖2一飛と逃げられるかもしれませんし,☖8四飛と取られても8五に駒を打たなければなりません。
 実戦は☗6二銀が選択されました。これだと☖7二金☗5一角までは必然の進行でしょう。
                                        
 後手の方針から考えると最大のポイントとなったのはこの局面だったような気がします。実戦は☖3一玉と逃げたのですが,☖同飛☗同銀不成☖同玉とすっきりさせてしまった方が,分かりやすかったのではないでしょうか。先手から最も単純な攻め筋は☗8一飛☖6一桂☗7一桂成でしょうが,これは☖9四角と王手に打つ手が攻防手です。実戦は後に☖9四角が打たれたのですが,この近辺で打てるようにしておくのが優ったように思えます。第2図以降も後手に好機はありましたが,一局の方針としてはそこを逃したのは仕方がなかったような気もします。
 永瀬叡王が勝って2勝1敗2持将棋。第六局は来月1日です。

 ニーチェFriedrich Wilhelm Nietzscheは意志voluntasがあるということは認めます。ここでの考察に合わせたいい方をするなら,ニーチェはそもそも唯一神が存在するということは認めませんから,唯一神の本性essentiaが自由意志voluntas liberaによって構成されるということは認める余地がありませんが,人間の精神mens humanaのうちに意志があるということは認めます。他面からいうなら,人間が意志するということは認めるのです。
 唯一神が存在するか否かということを除けば,スピノザとニーチェはここまでは一致しているのです。スピノザは唯一神が存在するということは認めます。これは第一部定理一一第一部定理一四系一から明らかです。ですからこの点についてはニーチェはスピノザを否定します。しかしスピノザは第一部定理三二系一から明らかなように,Deusの本性essentiaに自由意志が属するという考え方についてはそれを否定します。しかし人間の精神のうちに意志がある,いい換えれば人間が意志をするということは認めているのです。ただここは注意が必要で,スピノザの哲学の場合には,人間の精神が特有に意志をするというようには解さない方が安全です。一般に知性intellectusなるものが存在すれば,それが人間の知性であるかないかとは関係なく,その知性のうちには,その知性を構成している観念ideaと同じ数だけの意志作用volitioが含まれているとスピノザはいっていると解する方がより適切でしょう。
 したがって,スピノザもニーチェも同じように人間は意志をするというのですが,そこには重大な相違が存在するのです。第二部定理四九系で示されているような考え方については,ニーチェは同意しないからです。他面からいえば,スピノザは意志作用というのを,観念が観念である限りにおいて含んでいる肯定affirmatioないしは否定negatioであるというのですが,ニーチェは意志がそのような思惟の様態cogitandi modiであるということは否定するのです。ですから,スピノザが人間は意志するという場合と,ニーチェが人間は意志するという場合とでは,同じように人間が意志をするということがいわれているのだとしても,そこで行われている思惟作用は同じ作用ではないと考えなければなりません。少なくとも,同じ思惟作用ではない場合があるということは確実なのです。

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