スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

王将戦&論理構造

2021-01-15 19:33:43 | 将棋
 10日と11日に掛川城二の丸茶室で指された第70期王将戦七番勝負第一局。対戦成績は渡辺明王将が10勝,永瀬拓矢王座が3勝。
 掛川市長の振駒で渡辺王将の先手となった将棋は,角換り相腰掛銀で1日目から攻勢に出た先手が,後手の永瀬王座の反撃を許さずに攻めきって勝つという内容でした。
 今日はAIの評価の特有性について,かねがね思っていたことを書きます。
                                        
 第1図は勝勢の先手が王手を掛けた局面。実戦で似た局面が出ていますが,権利の都合で少し変えています。
 ここで後手が☖4三同金と取ると,☗同銀成☖同玉という必然の手順で第2図に至ります。
                                        
 第1図では☖3一玉と逃げる手も可能です。これには☗3二金☖同玉となり,そこで☗4三銀成と捨てれば後手は☖同玉と応じるほかなく,やはり第2図に至ります。よって,手数を伸ばすということに価値を見出さない限り,第1図で☖同金と指す手と☖3一玉と指す手は等価です。
 ところがAIだと瞬間的にはこれが等価とは分からず,異なった評価を出すことがあります。これはAIの読みの性質から生じます。後者の手順で☗4三銀成と捨てるところでほかの手を読み,かつその変化も読んだ上で評価が下されるので,前者の手順で第2図の評価が確定するより,後者の手順で評価が確定する方が時間を要するからです。局面が先手の勝勢である場合は,,後手にとって少しでもよくなる変化が出る可能性の方が高いので,往々にして第1図では☖3一玉の方が☖同金より高く評価されることが,一時的にはあるのです。
 時間を掛ければAIも等価ということに気付きますが,現時点だと人間の方が早くそれに気付くことがあります。これは人間の読みの性質がAIのそれとは異なるからです。こうしたケースが現在は生じますので,AIの評価を直ちに受け入れてはいけない場合もあるということになります。
 渡辺王将が先勝。第二局は23日と24日に指される予定です。

 実体substantiaをその属性attributumによっては分割することができないがゆえに,あるいは同じことですが実体が属性によっては分割され得ないがゆえに,思惟の属性Cogitationis attributumと延長の属性Extensionis attributumを共に神Deusの属性として措定することができます。第二部定理一および第二部定理二が両立し得るのは,スピノザの形而上学にこのような論理構造があるためだといわなければなりません。そしてこの論理構造が,ガリレイGalileo Galileiが1が唯一の無限数であるといっている場合にも成立していると僕は解します。というのは,ガリレイは1という数がもつ性質,あらゆる数の中で1という数だけがもつ性質を3つ示した上で,そのひとつの理由によって1が唯一の無限数であるといっているわけではなく,これら3つの要素が協同することによって,1を唯一の無限数として規定することができると解せる仕方で言及しているからです。これを形而上学に置き換えるなら,複数の属性が協同して単一の実体の本性essentiaを構成するということになり,これはスピノザの形而上学の論理構造と同一になるのです。
 延長の属性を神の属性として認めるか否かについて,ガリレイがどのように考えるのかは分かりません。あるいはこのこと自体はガリレイ自身の関心の外にあるというのがよいかもしれません。ですが,少なくとも複数の属性が単一の実体の本性を構成し得るということについては,ガリレイは肯定しなければならないと僕は考えます。こうした形而上学もまた,ガリレイ自身の関心からいえば,その外にあるといわなければならないでしょう。ですがガリレイがこのことを否定するとすれば,ガリレイ自身が数について述べていること,すなわち1が唯一の無限数であるということもまた成立し得なくなると思われます。少なくともガリレイ自身がその論拠としていっていることは,論拠としての正当性を失ってしまうことになるでしょう。
 思惟の属性を神の属性に帰することには,もうひとりの同時代人としてあげたデカルトRené Descartesも,強硬に反対しないだろうと思います。ですが延長の属性を神に帰することは,デカルトは認めません。デカルトは物体的実体substantia corporeaを神と別の実体として呈示しているからです。そこに形而上学を挿入します。

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