スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

王座戦&必要十分条件

2023-09-29 19:28:57 | 将棋
 27日に名古屋で指された第71期王座戦五番勝負第三局。
 藤井聡太竜王・名人の先手で後手の永瀬拓矢王座が雁木から袖飛車にするという相居飛車戦になりました。
                                      
 先手が王手を掛けた局面で,後手の直感では☖3一歩でした。もしもそう指したらどうなっていたかをみていきます。
 先手は☗4三銀☖同金と捨てて☗3二銀と打ちます。ここで☗3二角と打つのは強く☖4二王と上がって後手の勝ちですし,☗3一飛成も☖4一飛で後手の勝ちです。
                                      
 第2図から後手は☖3九飛と王手をするのが絶対の一手。この王手には先手は合駒をします。二種類ありますが,それによって後手の指し手が変わります。つまり後手はふたつの応手にそれぞれ対応しなければならなかったわけで,この複雑さが勝敗を分けた大きな要因となったのだと僕は思います。
 まず☗5九香の場合。これには☖4二金と引いて☗3一飛成に☖4一歩と打ちます。
                                      
 第3図で☗3四角と打てなくなっているのが☖3九飛と王手を掛けておく効果です。3四に角を打てなければ先手からさらなる攻めはありませんからこれは後手の勝ちです。
 ☖3九飛に☗5九角の場合は,☖5二王と上がり,☗3一飛成のときに☖5一金と寄ります。先手から指すなら☗4三銀成ですが☖同王で継続手がなく,これも後手の勝ちです。
                                      
 後手は第1図で残り時間が4分で,すべて投資したのですが,読み切れなくて☖4一飛と打ちました。ただこれは☗同飛成としてくるだろうとみたミスで☗6五角と打たれるのをうっかりしたものだったと思います。☖2一飛は☗3二角成が詰めろ飛車取りなので☖5四歩としましたが,☗5六角と金を取られて先手玉が寄らなくなり,先手の勝ちになりました。
 難しい手順で後手は読み切れなかったのですから,第1図から逆転負けをしたという感じでもないでしょう。ただ先手の方は負けを読み切っていたようなので,大逆転勝ちといってもいいかと思います。
 藤井竜王・名人が勝って2勝1敗。第四局は来月11日に指される予定です。

 注意しておかなければならないのは,これは僕たちの精神mensがある観念ideaを神Deusに帰しているのであれば,それを神に帰しているということを知ることができるという意味であって,神に帰していない場合には,それ自体では神に帰していないということを知ることができるわけではないということです。第二部定理四三備考にあるように,スピノザの哲学における真理の規範というのは真理veritas自身なのであって,虚偽falsitasではないからです。つまり,ある観念を真理と虚偽とに分かつことができるのは真理なのであって,虚偽にはそれができません。これと同じように,ある観念を神に帰しているのか帰していないのかということを分かつのは,神に帰しているということなのであって,神に帰していない場合にはその役には立ちません。したがって,もしも僕たちがある観念を神に帰しているのであれば,僕たちはその観念を神に帰しているということを知るだけでなく,ある観念を神に帰しているのか帰していないのかもまた知ることができます。しかし,もしも僕たちが一切の観念を神に帰していない場合には,僕たちは観念を神に帰しているのか帰していないのかということは分かりません。よってこの限りでは,いかにして観念を神に帰するのかということを知ることができる筈もないのです。
 よって,もしも僕たちが観念を神に帰しているのか帰していないのかということを知り,またいかにして神に帰するのかということを知るためには,現に僕たちの精神のうちに神に帰している何らかの観念があるという必要があります。そしてこのことは,単にその必要条件を構成するだけではなく,十分条件も構成しています。つまり,もしも僕たちの精神のうちに,神に帰している何らかの観念がありさえすれば,僕たちはその観念を神に帰しているということを知り,神に帰している観念と神に帰していない観念の相違を知り,いかにして観念を神に帰しているのかということも知るのです。
 この必要十分条件は,現実的に存在する人間の精神mens humanaのうちで充足しています。第二部定理三八系にあるように,現実的に存在する人間の精神の一部は,共通概念notiones communesによって組織されているからです。

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