スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

『ニーチェ』&無限連鎖の原因

2014-08-12 19:10:24 | 哲学
 『ニーチェと哲学Nietzsche et la philosophie』のほかに,ドゥルーズGille Deleuzeにはもうひとつ,ニーチェFriedrich Wilhelm Nietzsche関連の著作があり,日本語で読むことができます。朝日出版社の『ニーチェNietzsche』です。
                         
 ドゥルーズによる初版が出たのは1965年。1974年の第四版が翻訳に使用されたようですが,訳者によれば初版と第四版の間に相違はないとのこと。日本語版は1985年に出版。僕が所有しているのは1988年4月の第4刷。1987年に第3刷新装版発行とありますので,おそらく中身は変わっていないものの,装丁に変化があったものと推測されます。
 まずニーチェの生涯のこと。続いてニーチェの哲学のこと。最後にニーチェの著作に登場する人物や動物についての解説に該当する,ニーチェ的世界の主要人物事典というのがあります。これは非常に便利。たとえばディオニュソスといっても,ニーチェの著作の中では,様ざまな役割が付与されています。たとえばある部分でディオニュソスに言及されるとき,ニーチェがそこにどのような意味を含ませようとしているのかといったことが,この部分によって理解しやすくなります。
 以上の三部分がこの本の主要といえる構成要素だと僕は思います。ただ,本全体の分量としていえば,これで半分くらいでしょうか。残りの部分はニーチェ選集となっていて,ニーチェ自身の文章です。選集ですから,もちろんドゥルーズが意図的に選択したもの。ただ,訳者によると,その中には,ドゥルーズが手を加えて改訳した箇所があるとのことです。日本語版は,そのドゥルーズのフランス語を,そのまま日本語に訳してあるので,ニーチェ自身のドイツ語の日本語訳とは違いがある筈です。
 『スピノザ 実践の哲学Spinoza : philosophie pratique』のニーチェ版です。「哲学者たち」叢書というのがあり,ドゥルーズは『スピノザ』と『ニーチェ』を担当。そのうちの『ニーチェ』がこの本。『スピノザ』は手を加えられ,『スピノザ 実践の哲学』になりました。

 観念ideaと観念対象ideatumが同一個体であるということ。それ以外に同一個体はないということ。思惟Cogitatio以外の様態modusには必ずひとつの同一個体があるということ。思惟の様態cogitandi modi,とくに観念には必ずふたつの同一個体があるということ。ここまでの探求で得るに至ったこれらの条件を下に,個物res singularisの複合の無限連鎖は,どこまで一般化できるのかを考えていきます。
 観念対象が物体corpusである場合,観念の複合の無限連鎖が成立しなければならないということを,僕はすでに示しました。しかしこの無限連鎖は,観念されたものが物体であるということによっては,正しく説明され得ないのだと僕は考えます。これは第二部定理五からもそうでなければならないといえますし,第二部定理七備考からもそうでなければならないと思うのです。つまりもしも個物の観念の複合の無限連鎖が生じるのであれば,それが生じる原因causaは思惟の属性Cogitationis attributumそのものか,そうでなければ思惟の属性のうちにあるのであって,観念の対象となっている個物の属性そのもの,あるいはそのうちにあるのではないと考えるのです。その具体的な原因をどこに求めるべきであるかは,現在の僕には推測することしかできません。ただ,これは答えを出す必要はありません。少なくとも観念の複合の無限連鎖は,思惟以外の属性によって説明することはできないということだけ明らかになれば十分なのであって,スピノザのテクストからはそのように考えるべきであるということが明白になっているからです。
 そこで,個物の観念の複合の無限連鎖が,何らかの仕方で,観念されたものに依拠することなく,思惟の属性によって説明され得たと仮定しましょう。このことは同時に,観念対象となっている個物の複合の無限連鎖も成立することを意味します。これは物体の複合の無限連鎖が成立すれば物体の観念の複合の無限連鎖も成立するということを,物体の観念の無限連鎖が成立するなら物体の複合の無限連鎖も成立すると置き換えた上で,それを一般化したものです。もちろんこのとき,観念対象となっている個物の複合の無限連鎖は,それが個物となっている属性によって正しく説明されるのであり,観念によって,あるいは思惟の属性によって正しく説明されるのではありません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする