しんちゃんの徒然なる映画日記

劇場で観た映画の感想を中心に綴っていきます。これからの参考になれば・・・

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

2012年02月26日 18時03分39秒 | 作品名(ま行)
第258回「あなたはあの日、どこで何をしていましたか?」

2001年9月11日と聞けば多くの人がピンとくるのではないでしょうか。そう、「アメリカ同時多発テロ」が起こった日である。あの日、私は自宅でテレビを見ていた。すると突然すべてのチャンネルが報道番組に切り替わり、とても現実とは思えない、まるでパニック映画を観ているような光景を伝え始めた。あの日、世界貿易センタービルが消え去ってしまうことなど誰が想像できたであろう。あれから年月が過ぎ、あの事件を題材にした映画が何本も作られた。今回の作品「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」もあの事件をきっかけに起こる少年の成長と再生の物語。

2001年ニューヨーク、9歳の少年オスカー・シェルは優しい両親のもとで平凡に暮らしていた。あの事件が起こるまでは・・・9月11日同時多発テロ、宝石商を営むオスカーの父親トーマス・シェルは商談の為、世界貿易センタービルに偶然に居合わせてしまい命を落としてしまう。事件から1年が経過したがオスカーの心には深いキズが残ったままだった。母親との関係もうまくいかず、すれ違いの生活になっていた。ある日、父親のクローゼットに入ったオスカーは棚の上にあった青い花瓶を落として割ってしまう。するとその中から鍵の入った袋を見つける。オスカーはその鍵にあう鍵穴を探せば父親からのメッセージがあると信じ、1人で鍵穴を探すことにする。手がかりは袋に書いてあった「ブラック」の文字だけ。オスカーはそれが人の名前だと思い、ニューヨークに住む400人を超えるブラックさんに会いにいく。果たして父親からのメッセージとは?

今までこの「同時多発テロ」を題材にした映画はいくつかあるが、どれもノンフィクションとして映画化された作品で、このお話のようにあくまでモチーフとしてこの事件を用いた作品は初めてだったような。だからこそただの「お涙頂戴物」にならないか心配していました。それでも今年のアカデミー賞にノミネートされた作品だから見ておこうと思いました。しかし、そんな心配は余計なものでした。

主演のオスカーを演じたトーマス・ホーンはこれが映画初主演とは思えないくらい見事にオスカーを演じてくれました。ただの男の子ではなく、感受性の強い繊細な子で、しかも父親の死を受け入れることが出来ずに情緒不安定に陥っている・・・そんな難しい役をとても自然体で演じています。オスカーの両親を演じたトム・ハンクスとサンドラ・ブロックも2人ともアカデミー主演賞を受賞しているだけあって、普通のどこにでもいる両親をとっても上手に演じていました。

特にサンドラ・ブロックは自らも傷つきながら、心に深いキズを負ったオスカーをどうやって接していくか苦悩する母親を、とっても自然体で演じています。私が言うのはおこがましいですが、「スピード」の頃よりも年齢も重ねていい女優さんになったなぁ・・・としみじみと感じてしまいました。映画の序盤では存在感が薄かったから、余計に最後ではそう思ったのかもしれません。

点数は★★★★★です。決して押しつけがましいお涙頂戴な感動作ではなく、父親の死を乗り越えて、残された母親とオスカーが再び家族として新たな一歩を進み出す。その様子をとっても優しく描いている作品です。久しぶりに映画館で涙してしまったのは、私が歳をとって涙腺がゆるくなってしまっただけでは無いはずです。(笑)

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TIME/タイム

2012年02月19日 17時47分17秒 | 作品名(た行)
第257回「新たなアイデアで描く時は、説明を丁寧に」

SF映画好きな私としては、新たなアイデアで挑戦的に描かれた映画は大歓迎である。最近ではネタ切れな感じは拭い去れないが、それでも「インセプション」や「ミッション:8ミニッツ」など斬新なアイデアで観客を楽しませようという映画は多い。そんな新たな挑戦にとって1番重要なのは、「観客を置き去りにしない」事である。どんなに斬新なアイデアであったとしても、観客に伝わりづらく理解に苦しむ内容だとしたら、それは失敗と言わざるを得ないだろう。今回の作品「TIME/タイム」は果たして?

時は近未来。人類は爆発的な人口の増加を抑制する目的であるシステムを導入した。それは遺伝子操作により人類の成長は25歳で停止し、それ以降は体に埋め込まれた「ボディ・クロック」により時間が余命となる。通貨は姿を消し、人々は労働の対価として時間を得る。自らの命=時間を使い生活をしなければならない。ところがごく一部の人間が暮らす「富裕ゾーン」では数百年の寿命を持った人々が優雅に暮らし、貧しい人々が暮らす「スラムゾーン」では1日にも満たない時間で暮らすという理不尽な世界だった。スラムゾーンで暮らすウィル・サラスはある日、いつものバーで百年以上の時間を持つ男と出会う。ハミルトンと名乗った男はウィルに、残りの寿命を全て与え、自らは死を選ぶ。多くの時間を手に入れたウィルは、いくつもの検問を越えて富裕ゾーンへと足を運ぶ。そこで目にした驚くべき秘密とは?

といつもよりかなり長いあらすじを書きましたが、それは何より「寿命=時間」というシステムを説明する必要があったからに他なりません。そしてそれは映画の中でも同じく、この奇抜で斬新なアイデアをなぜ人間が受け入れて、普通に生活するようになったのかをある程度の説得力を持って観客に伝える必要がありました。ところがシステムについて語られたのは映画の冒頭だけで、あとはなんとなくこんな感じなのかな?と想像できるシーンはあっても、説明的なことはすっかり省かれてしまいました。その為、時間切れで命が失われるドキドキ感や、時間=通貨というシステムがもたらす弊害などをうまく観客に伝えられずに映画は終わってしまいます。

まずはシステムそのものについて。時間のやり取りを簡単にする為にお互いの手首を掴み、その向きで時間のやり取りをするようになっていますが、劇中でも悪党に襲われて簡単に時間を奪われてしまうように、あんな簡単に他人の時間を貰えてしまっては恐ろしくて外が歩けません。せめて人間同士のやり取りには何か条件(器具)などが必要だという設定にしても良かったのでは?と思います。

もう1つは劇中に登場するバトルについて、カジノでチップの代わりに時間を賭けるところまでは何となく納得できましたが、あのバトルについてはイマイチ理解に苦しみます。ルールもゲーム性もふんわりした感じで、あんなゲームで命を落とすのはバカバカしいし、見ている人間が盛り上がるのかも疑問です。

そう考えると時間切れ=死というシステムそのものに無理があることがわかります。そんな危険なシステムを簡単に全人類が選ぶはずは無いし、うっかり残り時間が無くなってしまっても大丈夫なように・・・などもっとキチンとしたシステムを構築することでしょう。そんな矛盾点が劇中で何度も見え隠れしてしまって、緊迫感や緊張感といったものがとても薄っぺらく感じてしまって、盛り上がりに欠けました。

点数は★★☆☆☆です。主人公のキャラクターもブレ気味なのも気になった点です。全世界を巻き込んで、このシステムを破壊しようとする主人公なのだから、もっと気迫というか鬼気迫る強い意志のようなものがあってもいいのかな?と思いました。あれではただ時間を盗む小悪党止まりです。その小悪党1人を排除できない「時間監視局」なんて必要ないでしょ。

未熟なシステムの中では、俳優がどれだけいい演技をしたところで観客を納得させることはできないでしょう。冒頭の30分ほどの時間を割いてでも、この「時間=命=通貨」というシステムをもっと具体的に観客に伝える必要があったのではないでしょうか。

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ドラゴン・タトゥーの女

2012年02月12日 17時54分25秒 | 作品名(た行)
第256回「新たなるヒロインの誕生となるのか?」

彼女の存在を知ったのはいつのことだったろう?それは2年ほど前のスウェーデン映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の予告編をネットで目にした事だった。面白そうだとは思ったものの、スウェーデン映画が私の暮らす地方都市で上映される訳もなく、彼女の存在はいつしか忘れ去られていった。ところがある時、何気なしに目にしたニュース。このミレニアム3部作をあのデヴィッド・フィンチャーがハリウッドでリメイクするとの報に胸を躍らせたのは言うまでもない。今回の作品は「ドラゴン・タトゥーの女」です。

スウェーデンで発刊されている月刊誌「ミレニアム」で大物実業家の不正行為を暴いたジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィストは記事の内容が嘘であるとして逆に名誉棄損で訴えられてしまう。記事の内容が証拠不十分であった為に敗訴し、記者としての自信を喪失していた彼のもとに、ある大企業の元会長から40年前に起こった少女失踪事件の調査依頼が舞い込む。すでに40年が経過し、新しい事実が見つかるはずもないと思いながらも、裁判の騒動から身を隠すにはちょうどいいと依頼を引き受けたミカエルだった。やがて1人での捜査に行き詰まった彼は背中にドラゴンのタトゥーをした天才ハッカーのリスベットに協力を依頼する。2人が事件の真相に近づくにつれて、闇に隠されていた真実が明らかになっていく。

まずはこの映画の注意点を。普通、ハリウッドでリメイクと聞けば物語の舞台をアメリカに移して作られると思っていました。ところがこの作品は原作に忠実にスウェーデンを舞台に進行していきます。その為、登場人物の名前がとっても覚えにくい。さらに大財閥の一族など登場人物がかなり多いので、誰が誰なのか混乱してしまう恐れがありますので、ご注意を。(まあ重要なのは数人なんですけどね。)

この作品で1番の収穫は主演のドラゴン・タトゥーの女=リスベット・サランデルを演じたルーニー・マーラの存在でしょう。ほぼ無名だった彼女は今作の監督であるデヴィッド・フィンチャーが撮った「ソーシャル・ネットワーク」で主人公を振る女の子を演じていました。その作品ではとってもキュートで愛らしい女の子を演じていたのですが、この「ドラゴン・タトゥーの女」では、タイトルどおり背中にドラゴンのタトゥーを入れ、耳や鼻にピアスを開け、眉毛を脱色し、劇中では性的暴行を受けるなど、本当に同一人物が演じているのか?と疑いたくなるほどの変容ぶりで驚かせてくれます。
もちろん見た目だけでなく、彼女の演技にも注目です。心に傷を負って、闇に閉ざしてきた心にミカエルと出会ったことで、一筋の光が見えてくるのですが・・・という繊細な心の描写も見事に演じてくれました。今年のアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされるのも納得の演技です。

主演の彼女ばかり褒めましたが、映画の内容もとても良く出来ています。158分というかなり長い上映時間ですが、まったく飽きさせることなくエンディングまで見せる手腕はお見事です。個人的には事件が解決してからのプロットが無駄じゃないかと思いながら観ていたのですが、ラストのシーンで心にグッときてしまいました。そして、それは次回作「炎と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」へと続いていく為の重要な伏線だったのでは?と思いました。

点数は★★★★★です。事件の内容やリスベットの境遇などR15指定に相応しい重苦しい内容になっているので、万人が気持ちよく「面白い」と呼べる作品ではありませんが、新たなヒロインの誕生を見ておいて損はないと思います。

キャストの変更などなく、このシリーズが完結することを願うばかりです。

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ベルセルク 黄金時代篇1 覇王の卵

2012年02月05日 15時47分39秒 | 作品名(は行)
第255回「むやみに実写化されるよりは、なんぼかマシかな?」
今回の作品「ベルセルク 黄金時代篇1 覇王の卵」はヤングアニマルで連載中のマンガ「ベルセルク」が原作だ。この原作を知ったのは、もうずいぶんと前になる。自分自身では持っていなかったが、マンガマニアの友人が購入していたコミックスを読ませてもらったのが最初の出会いだった。その時に私が思ったのは「これはマンガというよりは絵画じゃないか。」だった。それくらい緻密に描かれた絵に衝撃を受けた。それでいて物語も重厚で魅力的だった。それだけに映画化は無謀に思えた。

それは力のみが正義とされ、絶え間なく戦いが続く世界。孤独な剣士ガッツは傭兵として渡り歩く生活をしていた。ある戦いの中で身の丈を超える長大な剣を自在に操り、強大な敵を次々に倒すガッツを見つめる目があった。彼の名はグリフィス。傭兵集団「鷹の団」を率い、その美しい姿からは想像もつかない力と野望を秘めた男。彼はガッツに決闘を挑み、ガッツを鷹の団に引き入れる。それから3年の月日が流れ、ガッツとグリフィスの活躍で今や鷹の団は正規軍を押しのけ、王国一の軍隊となっていた。そしてグリフィスの野望が動き出そうとしていた。

以前に原作のマンガを少し見ただけだった私は、設定や世界観はわかっていましたが、物語そのものはすっかり忘れてしまっていました。そのことが今回の映画を観るには良かったのかも知れません。原作を熟読していたら色々文句を付けたくなったかも・・・。しかし、それでも物足りなさは否めませんでした。最初から3部作で映画化をしているせいなのか、まるでOVAの1話を映画館で見せられているような物足りなさでした。

上映時間が90分というのもその一因でしょう。どうして冒頭の30分を利用して、ガッツの最初のエピソードを描かなかったのでしょう?個人的にはコミックスの最初のエピソードがガッツというキャラクターを印象付ける為の大事なエピソードだと思っているのです。そうすれば、もっと観客を映画の世界観に引き込めたのでは?と思っています。

点数は★★★☆☆です。第2話、第3話へと観客を映画館へ誘うには少し迫力に欠けるような気がします。もっとグリフィスの闇の部分を描いたり、ガッツの孤独な部分を描いていたら、もっと映画に深みが増したのでは?正直、続きを観る為に映画館へ行こうと思える作品ではありませんでした。

最近のマンガを何でも実写化するという風潮には賛同できない私は、この作品をアニメーションでの映画化は評価しますが、原作の壮大さを映画化することは出来ていなかったような気がします。もう一度、最初から読んでみよう。

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