今回から、数回に渡ってM.ナイト・シャマラン監督についてコラムを書きたいと思います。それは何故かというと、彼の作品の評価があまりにも低いからです。
以前にも書いたように、出演俳優で映画を選ぶことはないのですが、演出監督で映画を選ぶことはあります。私の好きな監督をあげると、ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバークなどなど…その中の1人に今回のM.ナイト・シャマラン監督も入ります。
おそらく、このブログを観ている皆さんは「シックス・センス」はご覧になられていることでしょう。あの映画には衝撃を受けました。ありふれた設定なのに、その見事なストーリーテリングによって引き込まれ、最後の結末まで思考を停止させられ、あのエンディングには、「やられた!なんで気がつかなかった?」と完敗してしまいました。それ以来、彼の作品は全て観ていますが、「シックス・センス」以後の彼の作品に関して、世間の評価があまりにも低い事に嘆いていました。
そこで、このコラムを書こうと思い立ったのです。これから、数回に渡って「アンブレイカブル」「サイン」「ヴィレッジ」の作品の解説を書いていこうと思います。文章中にはネタバレを含みますので、これからご覧になりたい方は読まずにいてください。彼の作品はその方が楽しめますから。ここでの解釈はあくまで個人的なものです。このブログを読んだ人が「ああ、そういう観かたもあるなぁ。」「そういう風に観ると、面白くなるなぁ。」などと思ってくだされば、幸いです。
今回は、まず「アンブレイカブル」について書きたいと思います。このお話は観た時期にこのブログがあって、点数をつけているとしたら、★★★★★は間違いなかったと思います。よく目にする世間の評価は「意味がわからない」などありますが、あのお話は端的にいうと「スーパーマン」のお話なんです。監督本人も言っていますが、もしスーパーマンが現実に存在したら?というテーマなんです。
物語の中に登場する、サミュエル・L.ジャクソン扮するイライジャはスーパーマンでいう所のレックス・ルーサーであり、バットマンでのジョーカー、つまりは悪役(ライバル)であるのです。彼は、生まれつき骨が極度に弱い病気にかかっています。(この病気は実在するんですよ。)で、そんな不幸を持って生まれてきた自分を自ら「Mr.GLASS」と称しています。つまり悪役にはあだ名が付いているのが普通なので、自分のことを「悪」とし、悪に対する「善」=ヒーローを探し求めているのです。
その探し求める方法が、悪者らしく無差別爆破テロだったのです。ヒーローならば、こんな事くらいで死なないだろう。だから、この事件の中から生き残った人物こそ、自分と戦うべきヒーローなのだと考えたのです。それはとても歪んだ考え方ではあるのですが、私は納得してしまいました。
その中から、見つかったのがブルース・ウィリス扮するデヴィッドなのです。彼は若い時から、自分の力にうすうす気がつきながら、普通の人間として生きてきた…ところがイライジャの登場で少しずつ自分の能力を自覚し、その使い道を見つけていきます。それが正しき道だと信じて…しかし、協力者だと思っていたイライジャは実は「悪」であり、自分を探す為だけに多くの人々を殺してきた人間だったのです。
映画はここで終わります。イライジャは精神病院へ、デヴィッドは心に深いキズを追い途方に暮れる…
難病にかかったイライジャは、自分を「悪」とし、対する「善」を探すことで自らの存在意義を見つけたかったのです。でなくては、こんな難病を抱えた自分を神がこの世に召されるはずがないと。
映画の中には、多くの左右(上下)反対の映像が多く挿入されています。それは鏡に映った映像だったり、寝そべったベッドから見るテレビの映像だったりします。その意図は、表裏一体つまり「悪」の裏には「善」があり、「闇」の裏には「光」があるということではないでしょうか。この映画は相反する2人の人物の物語なのです。
こんな風に「アンブレイカブル」を観ると、とても面白い映画だと思うのです。さらにヒーローに付き物の弱点もしっかり用意されています。デヴィッドは水が弱点なんです。劇中ではプールに落ちて子供に助けられるシーンがあります。そんなところを用意するのも監督の徹底ぶりが垣間見られます。
この監督の作品は、一般的には「ホラー」とか「スリラー」というジャンルに分類されることが多いのですが、これから観る人はその固定概念を払拭することから始めましょう。それは、このレポートが完結する頃にはわかっていただけると思います。
次回は、「ヴィレッジ」について書きたいと思います。
アンブレイカブル [Blu-ray] | |
ブルース・ウィリス,サミュエル・L・ジャクソン,ロビン・ライト・ペン,スペンサー・トリート・クラーク,ジャーレーン・ウッダード | |
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