しんちゃんの徒然なる映画日記

劇場で観た映画の感想を中心に綴っていきます。これからの参考になれば・・・

ブレードランナー2049

2017年10月29日 20時37分25秒 | 作品名(は行)
第439回「前作はこの続編を描くためにあったのではないか?」
「ブレードランナー」といえば、映画ファンであれば誰もが通る道だろう。作品の内容・評価はさておき、映画ファンを自負するのなら鑑賞しておくべき作品だと思う。かくいう私も幼い頃から幾度となく鑑賞してきだ。幾度となくというのは、この作品は公開後に、幾つものバージョンが存在する珍しい作品なのだ。劇場公開版、ディレクターズカット、ファイナルカットなど未公開シーンを加えたりして幾つものバージョンが存在する。その度に私は挑戦するのだが、結果は決まって負けるのだ。何に負けるのか?睡魔に・・・今回の作品は「ブレードランナー2049」です。

ここからの記述には物語の確信に触れる部分があります。個人的には知ったうえで鑑賞しても、全く問題ないと思うのですが、どうも公になっていないようなので、ご注意ください。


舞台は病気や貧困が蔓延し荒廃した、2049年のカルフォルニア。ロサンゼルス市警に所属しレプリカント(人造人間)を専門に追いかけるブレードランナーであるK。正式名称はKD9-3.7、そう彼自身もレプリカントなのだ。彼はとある任務で隠れ続けていた旧式レプリカントのサッパー・モートンが住む農場へとやってくる。抵抗する彼を「解任」し、上司に連絡をとるKだったが、彼が偵察させていたドローンが木の根元に埋まるコンテナを発見する。その中には30年ほど前に死んだと思われるレプリカントの骨格が納められていた。分析の結果、女性であり死因は出産の際に施した帝王切開が原因だとわかる。これは重大なことを意味していた。生殖能力の無いレプリカントが出産するはずはないのだ。もしそれが事実だとしたら、世界中を混乱に陥れることになる。Kはその謎を探るべく調査を開始するのだった。

書きたいことが多過ぎて、どこから話せばいいのか迷っている。前述したように「ブレードランナー」はもちろん観ています。しかし、劇中の独特な世界感。歪で陰湿な情景、不確かな会話劇により、私は睡魔に襲われ、しっかりと観た記憶がなかったのです。しかも今作の上映時間が2時間43分と聞いて、「これは無理かも・・」と思ったので、レイトショー前に昼寝をし、万全と思える態勢で、劇場へと赴きました。すでに睡魔に負けることを想定していました。ところが、あれほど魅力的に映らなかった前作とほぼ同じ情景なのにこの作品で私が睡魔に襲われることはありませんでした。

前作は人間とレプリカントの「禁断の恋」を描いた作品。今作はその後の2人に子供が出来たことで、人間側にとっては絶望の火種、レプリカント側にとっては解放となる希望の種を描いた作品。個人的には後者のほうが物語のテーマとしてずっと魅力的に映りました。そしてそのテーマをSFの世界観の中で見事に描いてくれました。久しぶりにこれは面白いと断言できる作品でした。

ネット上では賛否両論が渦巻いています。公開前にも本国アメリカでは興行的には失敗だという記事もありました。でも私はこの作品は傑作だと思います。前作は今作を描くために作られた前日譚だと言ってもいいくらいに思っています。そのくらいこの作品はSF映画の形を借りながら、とても壮大なテーマを描いているのです。

この作品で一番問題になるのが、レプリカント(人造人間)の定義についてです。前作で私もずっと悩んでいたのですが、多くのSF映画で人間に近い存在として、アンドロイドや人工知能(AI)、ロボット、クローンなどが描かれています。それらは人間に近いといっても、明らかに違いが存在します。しかし、今作に登場するレプリカントは限りなく人間だと思って観てください。だからこそ、人間との違いがほとんど無いのに、奴隷として扱われ、劣悪な環境で重労働を強いられ、さらには戦争の兵士となり消耗品のように扱われる。感情もあり、怒りや哀しみも感じる。なのに「人間もどき」と迫害される。なんだがどこかで聞いたことがある気がしませんか?数百年前まで同じ人間の間で起こっていたことが描かれているのです。個人的には前作で「恋愛」に焦点を当てることでそのテーマが少し解りにくかったのかもと思いました。今作は「家族」というテーマになったことで状況は複雑化したのですが、理解が容易になっていました。

ボロクソにこの作品を評価している人もいます。ですが、私の評価は★★★★★です。この作品は素晴らしい作品だと思います。いい映画の条件として鑑賞後にその映画について誰かに話したくなる。というのがありますが、この作品はまさにそれです。この作品を低評価している人に、「そこはこう考えたら?この表現はこうなんだよ。」と説明したくなる作品です。長い上映時間、独特な世界感、解りにくい設定。そんなところも含めて、私はこの作品を評価したいと思います。まだまだ残された謎や、伏線がいくつかありますが、安易に続編を作って欲しくないくらい素晴らしい作品でした。

最後にこの作品はあくまでSF映画です。人間を描き、家族を描き、人と人造人間の違いを描いていますが、サイエンス・フィクションです。それを楽しめるか否かが、この作品の評価の分かれ目なのかなと考えています。この作品を観て、つくづく私はSF映画が好きなんだと再認識させられました。

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猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)

2017年10月18日 22時49分55秒 | 作品名(さ行)
第438回「これで終了なのか?それともまだ続くのか?」
かつて私が「猿の惑星」シリーズの鑑賞したのは中学生の頃。世の中にレンタルビデオという文化が登場した頃でした。全5作に渡って描かれたその一大叙事詩は、正直名作と呼べるのは1作目だけでした。それから時が経ち、撮影技術も飛躍的に進歩した2011年から始まった新シリーズ。それは前シリーズでは描き切れていなかった「どうして地球が猿の惑星と姿を変えてしまったのか?」を描くシリーズとなっています。個人的には好きなシリーズなのですが、良い話題も悪い話題も聞こえてこないということは本国でもあまり話題になっていないのかな?今回の作品は「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」です。

地球に蔓延した「猿ウィルス」によって多くの人類が死滅した世界。辛うじて生き残った人類はさらに新たな問題に直面していた。高い知能を持った猿達のリーダーであるシーザーは森の奥深くで静かに暮らしていたが、人間側でも好戦的な考えを持つ「大佐」とその軍隊によって命を狙われる日々だった。ある日、攻め込んできた部隊を殲滅し、生き残った人間をメッセンジャーとして、生かして返すことにした。「自分たちは静かに暮らしたいだけだ。攻めてこなければ、こちらからは攻撃しない。」と、しかし大佐はそんな事で諦めるはずもなかった。闇夜に乗じてシーザーを暗殺する為に隠れ家に自ら乗り込んで来た。突然の襲撃に混乱する猿達。シーザーは仲間を守ろうと奔走する。すると人間達の持っていた無線から「シーザーを殺した」という報告を聞いた。嫌な予感は的中する。殺されたのはシーザーの妻と息子のブルーアイズだった。怒りにまかせ大佐に襲いかかるシーザーだったが、大佐に逃げられてしまった。家族を殺され復讐の鬼と化したシーザーは仲間達を新たに見つけた隠れ家へ向かうように指示すると、自分は仇を討つために大佐の住む要塞へと向かうのだった。

正直、もっと話題になるものだと思っていた。名作「猿の惑星」の前日譚を描くシリーズ3作目である。もっと世間的に話題になってもいいと思うのだが、「待ってました!」という感じがしないのはなぜだろう。私が鑑賞した回は公開日翌日の土曜日の夜だったのだが、なんと観客が私を含めて4人しかいないという状況でした。地方都市のシネコンだからこんなものなのかも知れないが、ちょっと驚いた。では映画はつまらなかったのか?

全然そんな事はありませんでした。あくまで個人的な感想ですが、ずいぶんと丁寧にエピソードを描いているなという印象を持ちました。しっかりと伏線を敷き、必要なプロットを用意し、重要なキャラクターを登場させています。ストーリー的にはもっと短く出来たと思うのですが、あえて丁寧に描いているのかもしれません。私はそれに好感を持って楽しめたのですが、地味に感じる人もいるのかも。

点数は★★★★☆です。シーザーを始めとした猿の軍団の登場キャラクターも魅力的だし、今回の悪役「大佐」を演じたウディ・ハレルソンは見事な悪役っぷりでした。さらにこれからを期待させるコーネリアス、ノバの登場。残念ながらジーラは出ませんでしたが・・・正直、今作で最後だと思っていたので、もう少し早い展開と最後にはあの宇宙船が帰ってくるのだと思っていました。今作ではその辺りを全く描いていなかったので、続編があるのかも・・・しかし、あの名作を超えることは出来るのだろうか?

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