晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「バクダッド・カフェ」(87・独) 80点

2015-04-10 16:57:44 | (欧州・アジア他)1980~99 
 ・ テーマ曲がぴったりで不思議な癒し系の名品。

                   

 「シュガー・ベイビー」(84)のパーシー・アドロン監督が脚本も手掛けたオリジナル。ドイツがまだ東西に分かれていた頃の作品で、94・完全版、08・ニュー・ディレクターズ・カット版と再編集したほどの惚れこみよう。

 2年後日本で公開されミニシアター・ブームを呼び、映画好きにはレジェンド的存在。上映された渋谷シネマライズは今も健在だ。

 ラスベガスから240キロ離れたモハーヴェ砂漠にあるバクダッド・カフェは、モーテル兼カフェ兼ガソリンスタンドだが寂れていて立ち寄るひとも殆どいない。

 そこに現れたのが、旅行中夫と喧嘩別れして歩いてきたドイツ人のジャスミン。おまけに引き摺ってきたトランクは夫の物だった。

 カフェを切り盛りしていたのは、ブレンダでグウタラの夫を追いだし、息子は子持ちなのにピアノを弾いてばかりで、娘は男と遊び廻って帰ってこない。

 こんなジャスミンとブレンダが出会って、家族・従業員・常連客を巻き込みながらギスギスした雰囲気から少しずつ癒されて行く感じが何ともいえない心地良さ。

 客といっても長逗留しているのは謎の女刺青師デビーだけ。あとはラスベガスから流れてキャンピング・カーに寝泊まりしている自称画家のルーディやテントを担いで敷地内でブーメランをする青年と、たまにガソリンを入れに来る長距離ドライバー。

 カフェといいながらコーヒーメーカーが故障して、ジャスミン曰くポットで入れる茶色いお茶しかない有様。

 キッカケは掃除好きのジャスミンが頼まれもしないのに事務所や店を片付けたこと。そして決め手となったのは、<マジック>。手持無沙汰のジャスミンは見事な手さばきでマジックをして、みんなを和ませる。

 ローゼンハイムからやってきた太っちょのジャスミンには監督お気に入りのマリアンネ・ゼーゲブレヒトが演じ、いつも不機嫌なカフェの女主人にはCCH・パウンダーが扮している。まるっきり正反対に見えた2人だが、少しづつ共通の孤独感を癒す心の交流が観客を引き込んで行く。

 熟年画家・ルーディにはジャック・パランス、女刺青師にはクリスティーネ・カウフマンがそれぞれイワクありげな役でメリハリ感を醸し出す。

 そして何よりイメージを膨らませているのは音楽。序盤で息子が何故かJSバッハのプレリュードばかり弾いていたり、終盤ミュージカル・シーンとなって<ブレンダ・ブレンダ>と歌い踊ったりするのもあり得ないと感じながらも、全体の不思議さに溶け込んでいる。

 ジェヴェッタ・スティールが歌うテーマ曲「コーリング・ユー」は癒しの最たるもの。これほど映画にマッチしたテーマ曲はなかなかないほどぴったりだ。のちにホリー・コールやセリーヌ・ディオンが歌ってスタンダード・ナンバーとなったのも頷ける。            


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