晴れ、ときどき映画三昧

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「メンフィス・ベル」(90・英/米)60点

2022-08-12 12:32:00 | (欧州・アジア他)1980~99 


 ・ 爆撃機に搭乗した10人の青春群像劇。


 第二次大戦で英国に駐在した米国第8空軍所属の爆撃機B-17F愛称メンフィス・ベルに搭乗した10人の若者たちが任務遂行する姿を描いた青春群像劇。
 巨匠ウィリアム・ワイラーによる同名のドキュメンタリー映画のリメイクで、こちらはフィクション。娘のキャサリンが製作に加わっている。監督はマイケル・ケイトン=ジョーンズ。

 メンバーは操縦士で真面目なリーダーのデニス(マシュー・モディーン)、詩人で成績優秀な無線士ダニー(エリック・ストルツ)、陽気な副操縦士ルーク(テイト・ドノヴァン)、医大生の爆撃手ヴァル(ビリー・ゼイン)、甘い歌声の後尾銃座クレイ(ハリー・コニック・ジュニア)など。なかにはまだ19歳で自称・持て男の愛称ラスカル(ショーン・アスティン)など、生まれも育ちも様々な若き乗務員たち。
 クレイグ・ハリマン大佐(デヴィッド・ストラザーン)のもとにドイツ・ブレーメンの飛行機生産工場への爆破指令が出た。メンフィス・ベル25回目最後の出撃が決まった。出撃前のダンス・パーティでは普通の若者だが、無事任務遂行が完了すれば隊員たちは帰国できるとあって、不安を隠し将来の夢を語り合い勇気をふるう。

 メンフィス・ベルが米空軍博物館に展示されるほど有名なのは、戦時国債引き受け募集キャンペーンに利用されたため。ワイラー監督のドキュメントもプロパガンダ映画である。
 従って本作でも広報担当ブルース・デリンジャー大佐(ジョン・イスゴー)が若者たちを英雄に仕立てるための準備は怠りない。もちろんメンバー全員が24回も搭乗経験があるわけでもない。
 「父親たちの星条旗」で英雄に仕立て上げられた若者同様だが、本作ではあくまで若者賛歌でハリマン大佐が遺族からの手紙をデリンジャーに読ませるシーンやエンディング・クレジットで「全ての国の戦死者に捧げる」と述べる程度で戦争の悲惨さは抑制気味である。

 みどころは本物のB-17機を使ったリアルな特撮映像とアメリカの正義や良心、搭乗篤い友情を描いたスリリングなエピソード。
 ダニーが「僕は いずれあの雲の上で死ぬだろう・・・。」とイエーツの詩を朗読を詠んだあと出撃。ユージン(コートニー・ゲインズ)がお守りを無くしパニクったり、空中での激しい銃撃戦がありルークが敵機銃撃後僚友機に激突したり死への恐怖が迫ってくる。
 ブレーメンの工場が視界不良で黙視できず、無差別爆撃を回避するため旋回して爆弾投下を選んだデニスの大英断。
 帰還中も旋回銃座が破壊されラスカルの落下危機をバージ(リード・ダイアモンド)が助ける。
 ダニーが負傷して二週間通っただけの医大生ヴァルに託される。必死の手当のあと命を優先して落下傘付きでドイツ人に託すか連れて帰るかで意見が別れる。
 第4エンジンが被弾停止によるあわや炎上を急降下で消火したり、いよいよ着陸というとき片方の車輪がでないなど波乱万丈。
 全てが事実ではないが昼間爆撃を任務としていた初期の作戦では似たようなエピソードは事欠かないことだろう。

 戦争末期45年2月にはドレスデン、3月には東京で無差別爆弾投下をしたアメリカの正義は戦争終結のためだという。
 前にも述べたが筆者はB-29の焼夷弾投下により1歳2ヶ月で死んでいたかもしれない。真面目なリーダーであったデニスのモデルがB-29の搭乗員だったことを知って益々複雑な想いでこゝろの整理がついていない。
 いま中東やウクライナでミサイルが投下され一般人が命を失う現実を観るにつけ、無事帰還で拍手するような作品には色眼鏡で観てしまう自分がいる。

 
 

 
 

 
 

 


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