晴れ、ときどき映画三昧

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「初恋のきた道」(99・中/米)80点

2019-04-09 12:03:30 | (欧州・アジア他)1980~99 


・ 中国伝統の詩的な物語を映像化したC・イーモウ監督。


 中国華北部の美しい風景をバックに父の死で故郷へ戻った息子が、両親の若かった頃を回想する物語。パオ・シーの原作を「あの子を探して」のチャン・イーモウが監督した<しあわせ3部作の2作目>。ベルリン国際映画際の銀熊賞(審査員グランプリ)受賞作品でチャン・ツイイーの出世作。

 都会で働く青年ルオ・ユーシェン(スン・ホンレイ)が父の訃報を聞き、故郷の三合屯へ戻ってきた。残された母チャオ・ディ(チャオ・ユエリン)は昔ながらの葬儀をしたいと言ってユーシェンを困らせる。
 頑なに伝統の葬儀をしたい母の想いには、村で初めての自由恋愛で結ばれた若き日の二人の恋物語があった。

現在(’58年頃)をモノクロでスタートするこの物語は、息子の回想からカラーに変わる。チャオ・ディ(チャン・ツイイ-)が都会から赴任してきた20歳の教員ルオ・チャンユー(チョン・ハオ)との出逢いに遡って行く。
 その40年前の中国農村は学校もない村が珍しくない時代。よそ行きのピンクの服を着たチャオ・ディは、遠目で若い教員ルオ・チャンユーを憧れの目で視る。

 18歳にしては幼い風貌だが、その可憐さには目を奪われ彼女のアップだけでどんな気持ちだったかが推測できる。重ねて四季折々の風景が彼女の所作に重なって、それだけで物語りが進行するのが心地よく、誰でも身覚えのある初恋というものを想い出させてくれる。
 カラー部分は原作にはないため、監督の思い入れが詰まっているシーン。この直後ハリウッド・スターとなるチャン・ツイイーはこれがデビュー作で、台詞はほとんどなく<視る・走る・待つだけの演技>で観客のハートをわしづかみしてしまう。

 邦題「初恋のきた道」はズバリだが、原題は「私の父親と母親」である。純愛物語でもあるが、40年後の母と息子を通して家族や親子の物語でもある。
 
 文革時代で引き裂かれそうになった両親が結ばれ、僻地の村で教育に一生を捧げた父とそれを一途に愛した母の姿が目に浮かぶ。時代の変遷とともに都会で暮らす息子が行った両親への親孝行が涙を誘う。祖国愛に満ちたイーモウ監督の力作だ。


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