・ 戦争で翻弄されながら生き抜いた芸術家たちへのオマージュを描いたルルーシュの渾身作。
「男と女」(66)の名匠クロード・ルルーシュが、フランシス・レイとミシェル・ルグランの音楽とともに、1930年代から81年まで、パリ・モスクワ・ニューヨーク・ベルリンでの4家族を描いた185分の大河ドラマ。
36年モスクワ・ボリショイ劇場で出会ったタチアナとボリス、37年パリ・キャバレー・リドで出逢ったアンヌとシモンの二組夫婦を中心に、パリのナイト・クラブ歌手エブリーヌとナチの軍楽隊長カールの出会い、ニューヨークを中心に活動する音楽家で楽団指揮者のグレン一家が絡む壮大なストーリー。
物語が進んで行くとその逸話からボリスの息子セルゲイが伝説のダンサー<ルドルフ・ヌレエフ>、エブリーヌがシャンソンの女王<エディット・ピアフ>、カールが帝王<ベルトフォン・カラヤン>、グレンが楽団指揮者<グレン・ミラー>がモデルであることが分かるが、勿論ルルーシュのオリジナル。
登場人物も多く、NHKの大河ドラマと違いいきなり登場してもクレジットは入らないから、目を凝らしていないとおいて行かれそう。
おまけに、シモンとその息子ダビットをロベール・オッセン、ボリスとその息子セルゲイをジョルジュ・ドン、タチアナとセルゲイの娘タニアをリタ・ポールブールド、グレンとその息子ジャックをジェームズ・カーン、ジャックの妻スーザンとその娘サラをジェラルリン・チャップリン、エブリーヌとその娘エディットをエヴリーヌ・ブイックスが演じるというややこしさ。
筆者もキャスティングと役柄をオサライして漸く理解できたので、とても初見では大筋を追うだけで精一杯だった。お蔭で3時間を超える大作だが、4大都市の象徴的な観光名所映像とともに流れる映画音楽の巨匠ふたりの音楽と大音響の音量に酔いしれだれることはなかった。
人間は何度でも過ちを繰り返すという警鐘を鳴らすようなエッフェル塔前のトロカデル広場でのボレロが圧巻の、ドルジュ・ドンの踊りとともに終焉を迎える。
ルルーシュの偉大なる失敗作?!ともいわれる本作は、戦争で翻弄されながら生き抜いた芸術家たちへのオマージュでもあり、今後も再評価される時代があることだろう。
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