・ 70年代カンボジアで、米国人記者と現地助手が体験した衝撃のドラマ。
NYタイムズ記者シドニー・ジャンバーグが70年代カンボジア内戦を取材した体験と、通訳兼ガイドを務めたディス・プランの二部構成ドラマ。監督は本作でデビューしたローランド・ジョフィで、オスカー3部門(助演男優・編集・撮影)受賞。
前半は、73年8月プノンペンに着任したNYタイムズ記者ジャンバーグ(サム・ウォーターストン)の奮戦記。この頃カンボジアは米国が後ろ盾のロン・ノル政権時で、反米・救国が旗印のクメール・ルージュの革命勢力が勢いを増しているときである。
米軍によるニエクロン空爆が事実かを確かめるためリーヴス少佐やキンケード領事の証言をもとに現地の情報を本国に送る奮闘ぶりが描かれる。ダンダン劣勢になる政権のもと多数の犠牲者が出るなか、ジャンバーグやカメラマンのアラン(ジョン・マルコヴィッチ)、英国人記者スエイン(ジュリアン・サンズ)の三人は病院取材中捕らえられ危険な目に遭うが、助手兼ガイドのプランに助けられる。
フランス大使館に避難するが戦況悪化で出国を余儀なくされ、プランも同行しようとするがパスポートの偽造がバレ残ることに・・・。
帰国したジャンバーグはピューリッツア賞の授賞式スピーチでプランに感謝の意を表すが、同僚のアランから<自分のためにプランを残したのだろう>と非難されてしまう。
その頃プランは階級差のない共産主義社会を目指すクメール・ルージュによる、農業集団での強制労働についていた。大衆にとって解放者だと思っていたクメール・ルージュは弾圧者だったのだ。
後半はプランが体験する悲惨な逃亡劇を追いながら、200万人とも言われる大量殺戮がどのように行われたのかの一端が窺えるエピソードが描かれていく。のどかな美しい田園風景がキリング・フィールである矛盾が胸に迫って白骨が野ざらし状態である惨状は思わず眼を覆ってしまった。
知識人や大都市住民を強制労働させ、医師や宗教従事者を容赦なく処刑し、子供たちを洗脳教育して親をスパイするなど革命の混乱ぶりは歯止めが掛からない。
プランは空腹のあまり牛の血を吸っているところを見つかり炎天下に放置されたり、村の長にハウスボーイとして雇ってもらいながら命を繋いでいく。
その長も処刑に異論を唱え銃殺され、プランは息子を連れ脱走するがその子も地雷で命を落としてしまう。
プランを演じたハイン・S・ニョールは元医師で演技経験は皆無だったが、自ら強制労働の体験を活かしての迫真の演技で見事助演男優賞を受賞した。その後ロス在住中、強盗事件で亡くなったのも背景があったのでは?と憶測されている。
76年秋 タイの難民キャンプで再会した二人。バックにカーラジオから流れた「イマジン」聞こえてくる。
本作は米国人記者とカンボジア人助手との感動的友情物語と解釈すべきか?
現実は<国際社会が関わり見放された国カンボジア>は大量の犠牲者が出て、未だに地雷に怯えながら暮らしている人々がいる。
<専制政治と内政干渉という今も世界が抱える問題>を改めて考えさせられる作品だ。
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