晴れ、ときどき映画三昧

「頭上の敵機」(49・米)80点



 ・ リーダーシップの在り方の教材となったH・キングの戦争ドラマ。


 第二次大戦での実戦を忠実に再現した唯一のハリウッド作品と言われた本作。実話をもとに英国駐留米国陸軍・第8空軍の指揮官を通して兵士たちとの信頼関係や苦悩・葛藤を描いたモノクロ映像による戦争ドラマ。 
 
 監督は「地獄への道」(39)の名匠ヘンリー・キング。主演はアメリカの良心ことグレゴリー・ペック。オスカー助演男優賞(ディーン・ジャガー)・録音賞を受賞。

 連合軍と独軍の空中戦実写フィルムや胴体着陸などの撮影によるスリリングな映像で、死と隣り合わせの現場でのリーダーの在り方を問う教材ともなっている。

 米国の弁護士・ストーヴァル(D・ジャガー)は、ロンドンの骨董屋でトビー・ジョッキ(老人の顔をあしらった陶器)を見つけ、7年前年秋の第8空軍918航空群時代を回想する。

 <昼間精密爆撃の信望者>である第8空軍司令官プリチャード少将(M・ミッチェル)のもとで、918航空群指揮官ダベンポート大佐(ゲイリー・メリル)は独軍の猛反撃に遭い部下の士気が低下、対策が執れず苦悩していた。
 精度向上のため低空飛行を命じられ、部下思いの大佐は司令部上官のサヴェージ准将(G・ペック)に猛然と抗議。
 任務より部下を重視する大佐の人柄が欠点であると指摘したサヴェージが指揮を執ることに。

 サヴェージはストーヴァル副官を伴い赴任早々酔っていたゲートリー中佐(ヒュー・マーロウ)を解任し、カイザー軍医(ポール・スチュアート)の忠告も無視し厳しい訓練を挙行。
 パイロット全員が異動届を出すが、ストーヴァルは処理引き延ばしでサヴェージをサポート。さらに厳しい訓練のもとサヴェージ自らB-17機の搭乗し悪天候のなか重要拠点を爆撃無事帰還する。
 悪天候下、帰還命令を無視したことを上司から責められてもサヴェージは部下の奮闘を称えるよう直訴、兵士たちの信頼を勝ち取っていく。

 解任されたゲートリーが負傷したことを隠し闘い続けたのを知ったサヴェージは、彼を大佐に昇進させる。ゲートリーは涙するが、そのときバーの暖炉にはトビー・ジョッキがあった。

 戦渦は益々激化するなか独空軍軍需拠点の爆撃命令が下り、犠牲者を出しながら作戦遂行したサヴェージは空軍本部の移動も断り出撃に拘った。
 しかし限界を超えたサヴェージは出撃直前で錯乱状態に陥りゲートリーに代わる。918航空群の作戦成功をダベンポートから聴かされ漸く落ち着きを取り戻す...。

 二枚目だが大根とも言われていたG・ペック。病に陥った主人公が部隊の成功を爆音で知る瞬間の表情など細かい演技も熟し、演技派でも通用することを証明した貴重な作品となった。
 翌年H・キング監督とのコンビで「拳銃王」に出演後、「ローマの休日」(53)・「白鯨」(56)・「大いなる西部」(58)、さらに「アラバマ物語」(62)と様々な役柄で活躍したのは周知の通り。

 戦争という究極の世界での組織における人間の在り方をどう捉えるか?
 規律の遵守・最適な人材配置・アメとムチの使い分けによる個人育成など、ふたりの指揮官の違いが浮き彫りにされていた。

 サヴェージ准将のモデルとなったのは306航空群アームストロング大佐の在任6週間のできごと。モデルのなかには、のちの太平洋戦終結の英雄として称えられたヒロシマ原爆投下のポール・ティベッツ機長もいたという。
 過去の教訓がありながら未だに戦争が絶えることがない現在、祖国のために戦った英雄たちをどう評価すべきか?永遠のテーマである。
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