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「ターミナル」(04・米)70点

2019-04-04 15:10:00 | (米国) 2000~09 


・ S・スピルバーグとT・ハンクス3度目のコンビによるコメディ・タッチな人間ドラマ。


 空港に閉じ込められてしまった男の泣き笑いをスティーヴン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演で映画化。「シカゴ」(02)のキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、「Shall We Dance?」(04)のスタンリー・トゥッチが共演。

 アメリカ、ジョン・F・ケネディ国際空港。入国手続き中のクラコウジア国(架空の国)のビクター(T・ハンクス)は、クーデターで母国が消滅、出入国を禁じられ空港内で生活する羽目になってしまった。空港労働者との交流や客室乗務員との淡い恋など、ユーモアを交えながら綴られる129分。

 「プライベート・ライアン」(98)、「キャッチ・ユー・イフ・ユー・キャン」(02)に続く3度目のコンビにだが、T・ハンクスの演技に全てを委ねたような演出のスピルバーグ。最大のエネルギーはジョンF空港をセットで再現することに注いだようで、重厚なヤヌス・カミンスキーの映像も軽快なジョン・ウィリアムズの音楽も本物感を醸成するためのもの。

 何ヶ月も空港内で暮らし、有名人物となっていく主人公。悲惨な境遇を、限られた空間で懸命に暮らす姿はまるで宇宙飛行士のようだ。突拍子もない展開だが、モデルがいたという。パリのドゴール空港になんと18年も生活していたイラン人、マーハン・カリミ・ナセリで「ターミナル・マン」という本まで出している。

 もっとも人物像は正反対に近く、主人公ビクターは言葉も不自由ながら人なつっこく、生活力旺盛。ポーカー仲間エンリケ(ディエゴ・ルナ)と入国係官(ゾーイ・ザルタナ)との縁結びをしたり、客室乗務員アメリア(k・ゼタ・ジョーンズ)に片想いしたり悲壮感とはほど遠い。

 そんないい人ばかりでは話は盛り上がらないので、敵役を一手に引き受けたのが警備局主任のフランク(スタンリー・トゥッチ)。局長昇進間近の生真面目な小役人ぶりが、身につまされる。

 父親との約束を果たすため、はるばるアメリカにやってきたビクター。T・ハンクスの泣き笑いで進むハートフルなファンタジーは、ジャズの巨匠ベニー・ジャコルソンが奏でるサックスの音色で幕を閉じる。

 若い頃コメディで売り出したT・ハンクスが大スターとなり、シリアスなキャラクターが増えつつあるこの頃。本作はちょうど分岐点になったようなシニカルな味付けが隠し味のヒューマン・コメディともいえる。

 

 


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