月神 葉室麟(著)2013年7月発行
波乱の幕末、福岡藩の尊王攘夷派の指導的立場に居た月形洗蔵の生涯と
年上の従兄弟「洗蔵」を尊敬の眼差しで観ながら育った「月形潔」の
それぞれの険しい生涯を描く時代小説。
前半「月の章」の主人公は「月形洗蔵」で、
幕末の混乱時の福岡藩にあって、尊王攘夷派として生きる姿を軸としている。
洗蔵は、同士とともにあくまでも攘夷を貫こうと思考し行動する。
が、それ故に、攘夷派内の悲惨な争いや、藩主「黒田長博」との確執が起こり
惨い最期を迎えることとなる。そんな洗蔵の厳しい半生が描かれている。
後半「神の章」では、「月形潔」が主人公となる。
尊敬していた従兄弟「洗蔵」の苦難と死の姿を目の当たりにしていた「潔」は、
明治という新たな時代を迎え、新しい世の中の為に役立ちたい、と官吏の道に進む。
しかし、明治政府の主流となった長州藩、薩摩藩の出身ではない
元福岡藩士に、望むような道は閉ざされていた。
結局、未開の地北海道での集治監建設の責任者として、
過酷な現場を監督する仕事に携わることとなる。
極寒冷の地を開拓しながら、監獄を造り、送られて来る多くの囚人の管理、
害虫被害、餓え、病い、などと闘いながら、援助もないなかで悩みを抱え
自問自答し身を削るように生きる姿が切なく痛ましい。
本書は、著者の他の作品とはひと味違っている、ような気がした。
真摯に信じる道を生きようとする男の姿が描かれているところは同じなのだが、、、。
が、個人的には、今まで読んだ葉室作品とは違い、
どうも救いがない感じがし、気分が暗くならざるを得なかった。
わがまま母